東レは、軽量かつ、複雑な形状でも高剛性の部品の効率的製造ができる、新たな高弾性率炭素繊維と、その炭素繊維を使用した射出成形加工に最適な樹脂ペレットを開発した。今後、3年以内の製品化を目指し、研究・技術開発を進める。
東レは、2014年に世界最高強度をもつ炭素繊維「T1100G(※強度:7GPa、弾性率:320GPa)」を、また2018年には、ナノレベルの最新技術を適用した高弾性率かつ高強度を両立した炭素繊維「M40X(※強度:5.7GPa、弾性率:377GPa)」など、高強度炭素繊維のトレカTシリーズを販売。これらは主に圧力容器や自動車など、産業用途や航空用途に採用されてきた。
しかし、高弾性率の炭素繊維は直径が約5ミクロンと細く生産性が制約されるため、コスト面に課題があったと云う。
そこで今回、トレカMXシリーズに適用したナノレベルでの構造制御技術をさらに発展させ、直径7ミクロンの繊維1本の内部構造を均一に制御。産業用トレカTシリーズの標準的な弾性率230GPaを約70%向上させた、390GPaのコストパフォーマンスに優れる高弾性率炭素繊維を開発した。
この炭素繊維を使用した射出成形用樹脂ペレットであるトレカペレットは、従来の高弾性率タイプに比べて成形後の炭素繊維を長く維持する効果も得られることから、弾性率が41GPa(比重1.4)という、軽量合金の代表であるマグネシウム合金に匹敵する弾性率(※弾性率:45GPa、比重1.8)を軽量で実現。
そのため、この新規トレカペレットを用いることで、軽量で複雑な形状の部品を射出成形により生産性良く得られ、成形部品の軽量化が期待できると云う。
東レは今後、次世代モビリティ対応に向け車体の軽量化がますます重要となる自動車部品用途や一般産業用途など、幅広く産業用途に展開していくとしている。