東レは5月19日、炭素繊維複合材料(Carbon Fiber Reinforced Plastics/以下、CFRP)の放熱性を金属同等まで高める「高熱伝導化技術」を創出したと発表した。
この高熱伝導化技術をCFRPに用いることで、熱源からCFRP内部の熱伝導経路を通って効果的に放熱することができるようになるため、モビリティ用途におけるバッテリーの劣化抑制、電子機器用途のパフォーマンス向上等に貢献すると云う。
軽量で高強度、高剛性の特長を有するCFRPは、航空機や自動車、インフラ部材、スポーツ用品、電子機器などに広く使用されるが、自動運転や電動化など、CASE(※1)に代表される次世代モビリティ用途では、充電時の発熱によるバッテリーの劣化を防ぐため、構造材料であるCFRPの放熱性向上が求められている。
CFRPの熱伝導性は、アルミ合金等の金属と比べて劣るため、金属よりも熱伝導性に優れたグラファイトシート(※2)を表面や内部に配置することで放熱性を改善するアプローチが取られているが、グラファイトシートは脆性材料であるため、破断や飛散、損傷しやすく、CFRPの品位、品質が損なわれてしまうといった課題があったと云う。
東レは今回、独自技術により開発、実用化した、炭素繊維の短繊維で三次元的なネットワークを形成する高剛性多孔質CFRPをを支持体とする、グラファイトシートを保護した熱伝導層を開発し、その破断や飛散、損傷の抑制を可能とした。そして、この熱伝導層にCFRPプリプレグ(※3)を積層することで、CFRPの力学特性や品位、品質を損なうことなく、従来CFRPでは到達しえない金属以上の熱伝導性を発現させることに成功した。
この技術では、熱伝導経路であるグラファイトシートの厚みや積層位置を自由に制御、配置できるため、CFRPの冷却効率や熱拡散経路を自在に設計するヒートマネジメント設計(※4)も可能。軽量性に加え、放熱性が求められる次世代モビリティ用途、モバイル電子機器用途、ウェアラブル端末用途への適用が期待できると云う。
東レは、CFRPの軽量性を損なうことなく、バッテリーや電子回路からの発熱を効率よく放熱するソリューションとして、提供していくとしている。
※1)CASE(Connected Autonomous Shared Electric):「コネクテッド」、「自動運転」、「シェアリング」、「電動化」による、安全快適で利便性の高い次世代モビリティサービス。
※2)グラファイトシート:黒鉛をシート状に加工したもの。高い熱伝導性を有し、放熱性・熱拡散性に優れる。
※3)プリプレグ:繊維状補強材に樹脂を含浸させたシート状の中間材料。航空機の胴体・主翼・尾翼などの主構造部材や、ゴルフクラブのシャフト、釣り竿、テニスラケットのフレームなどのスポーツ用途中心に幅広く用いられている。
※4)ヒートマネジメント設計:発生した熱の伝導経路をコントロールし、効果的に外部へ放出、あるいは活用する操作。
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■(東レ:資料のダウンロード)放熱性に優れる炭素繊維複合材料を創出:https://go.mktg.toray/t012-WC-20210519-1647-01-downloadpage.html