東レは、瀬田工場(滋賀県大津市)内のテキスタイル・機能資材開発センターに、新たなテキスタイル・縫製品の開発拠点「テクノラマGⅢ」を設置し、6月11日に竣工した。
テクノラマGⅢでは、従来の人工気象室「テクノラマ」の機能を拡充するとともに、開発領域の拡張に向けた新規評価・解析設備の導入と、社内外との連携強化により新コンセプトの高付加価値商品の開発を推進する。
今回、テクノラマGⅢに新設した「人工気象室」は、北極圏や南極圏のような極低温低湿環境やゲリラ豪雨など、より多様な気象条件が再現できるほか、独立制御の温調室を3室(主室1室、副室2室)設置。真夏の屋外から冷房の効いた室内に移動する場面のような、日常生活における急激な温度変化を伴う実験も可能とした。
また「人体・運動測定評価室」には、筋電計や発汗計、モーションキャプチャーなどの新規評価・解析設備を導入。人間工学に基づく生理解析やスポーツ工学に基づく動作解析による評価・解析技術を深化させた、新たな領域での開発に取り組む。また、ここで得られた解析データを活用し、高機能ウェア設計技術や縫製技術を強化するとしている。
上記に加え、テクノラマGⅢでは、同社グループの繊維素材・商品開発に関する情報の管理・発信機能を拡充するため、「テキスタイルライブラリー」および「素材・商品展示室」を整備し、共同開発拠点となる「オープンラボ」を設置。社内外との連携による商品の高度化と開発の短サイクル化を目指すとのことだ。
テキスタイル・機能資材開発センターは、紡績・糸加工から製織・編成、染色、縫製までの高次加工技術開発のヘッドクォーターとして、1983年に同センターに人工気象室「テクノラマ」を導入。防水透湿素材や機能性インナーなど、数多くの高機能商品を開発。
2008年には、中国の東麗繊維研究所(中国)有限公司(TFRC)に、自動車などの構造物を収容可能な大型の人工気象室「テクノラマGⅡ」を設置。
日本との連携のもと、高機能テキスタイルや産業資材、環境対応素材などの開発を推進してきたと云う。
東レは、今回の「テクノラマGⅢ」の竣工により、グローバルな連携体制を一層強固にするとともに、最先端の評価・解析技術の深化と社内外との連携強化を通じた新コンセプトの高付加価値商品の開発を加速、繊維事業の飛躍的な拡大に貢献するとしている。
[テクノラマGⅢの概要]
<名称>
テクノラマGⅢ
<目的>
(1)人工気象室の機能強化
(2)新たな評価・解析設備を活用した開発領域の拡大
(3)繊維情報の管理・発信機能の強化
(4)社内外との共同開発機能の拡充
<概要>
1.設置場所:テキスタイル・機能資材開発センター(東レ瀬田工場内)
2.設置面積:940m2(2階建て)
3.主要設備
(1)人工気象室
①本室(1室) サイズ:W5×D6×H4.5(m)
温度:-30~60℃
湿度:20~80%RH
風 :0~30m/s
降雨:0~200mm/hr(ゲリラ豪雨対応可)
日射:0~1.16kW/m2
②副室(2室) サイズ:W5.3×D2.5×H3.0(m)
温度:-10~40℃
湿度:20~80%RH
(2)人体・運動計測測定室
筋電計や発汗計、モーションキャプチャーなどの新規評価・解析設備を導入し、生理学的解析や動作解析を実施。
(3)テキスタイルライブラリー
東レグループの原糸から開発・量産サンプルデータを一元的に蓄積・管理し、新たに導入したシミュレーション設備と合わせることで、素材・製品設計を実施。
(4)素材・商品展示室
テキスタイル・機能資材開発センターで開発した繊維製品を系統的に展示。
(5)オープンラボ
顧客やサプライチェーンとの共同開発を行うことで、強力な連携体制を構築し商品の高度化、短サイクル化に対応。