しかし、Li(Ni0.5Mn1.5)O4を用いた高出力型全固体電池は、固体電解質と電極が形成する界面における抵抗(界面抵抗)が高く、リチウムイオンの移動が制限されてしまうため、高速での充放電が困難だった。一方で高速充放電が実現すれば、携帯電話やパソコンが数分で充電完了することも夢ではなくなる。ゆえに高出力型全固体電池の界面抵抗の低減、さらには高速充放電の実証は、喫緊の課題となっていた。
そこでこれらの要素や環境、情報を踏まえ同研究グループでは、薄膜作製技術と超高真空プロセスを活用し、Li(Ni0.5Mn1.5)O4エピタキシャル薄膜[用語2]を用いた理想的な全固体電池を作製した(図1)。
図1. 本研究で作製した全固体電池の概略図(左)と写真(右)
より具体的には固体電解質と電極の界面におけるイオン伝導性を評価した結果、界面抵抗が7.6 Ωcm2という極めて低い値となることを見出した(図2)。
これは、従来の全固体電池での報告より2桁程度低く、液体電解質を用いた場合と比較しても1桁程度低い値で、この活性化エネルギーを見積もったところ超イオン伝導体[用語3]と同程度の低い値(0.3 eV程度)を示すことが判っている。
図2.本全固体電池の界面抵抗の測定結果(交流インピーダンス測定)。x軸が実部、y軸が虚部に対応する。赤の円弧の大きさから、界面抵抗の値を7.6 Ωcm2と見積もることができる。
このような低抵抗界面の安定性を探るため、大電流で充放電試験を行い、14 mA/cm2という大電流でも安定して高速充放電することに成功。実験では100回の超高速充放電では電池容量の変化は全く見られず、リチウムイオンの高速な移動に対して、固体電解質と電極の界面が安定であることが実証された。(図3)
また全固体電池の構造解析を行った結果、固体電解質と電極の界面を形成した直後に、固体電解質から電極へ、リチウムイオンが自発的に移動することも明らかになっている。