横浜ゴムは、タイの大学と共同で2013年から行っている天然ゴム研究の成果をThe International Polymer Conference of Thailand 2018(PCT-8)で発表した。
共同研究を行っているのはマヒドン大学とプリンス・オブ・ソンクラー大学の2校で、今回マヒドン大学との研究により、天然ゴムの基となる樹液(ラテックス)に含まれるタンパク質の解析と、天然ゴムの生合成に深く関与するタンパク質の特定に成功。
これにより天然ゴムの生合成への理解が深まり、品質や生産に関わる研究の加速化が可能となるとしている。
天然ゴムは、パラゴムノキから採取したラテックスを加工した原料で、タイヤの約30%を占める主要原料のひとつ。生産が東南アジアに集中しているため、異常気象や病気によって大規模な生産阻害を受けるリスクがあると云う。
同社は、今後タイヤ需要の拡大が見込まれる中、天然ゴムの品質向上や、安定生産に貢献する技術開発を推進することが重要な責務と考え、研究成果を天然ゴム農園の維持・発展に活用していくとしている。
マヒドン大学との研究では、新鮮なラテックスやパラゴムノキの苗木からタンパク質を抽出し、含まれているタンパク質をナノレベルで分析し、ラテックスに含まれる800種以上のタンパク質を解析。これらの一部が天然ゴムの生合成や耐ストレス性に関係していることを解明した。
さらに、異なる品種のパラゴムノキを比較することで、生合成を促進するタンパク質や阻害するタンパク質の特定に成功。これらは生合成のバイオマーカーとしての活用が期待できると云う。
ソンクラー大学とは天然ゴムの基礎研究を行っており、季節や地域、品種、加工法の異なるラテックスを分析し、ゴムの物性や化学特性の違いの有無を長期間評価。
現在までの研究で、天然ゴムは組成から物性まで非常に安定した材料であり、外的要因の影響を受けにくいことが分かってきているとのことだ。
横浜ゴムグループは、CSRの重要課題のひとつに「バリューチェーンを通じたCSR活動の推進」を掲げている。
同社は、この方針の下、今回の天然ゴムの共同研究に加え、天然ゴム農園での生物多様性調査や農家の安定収入のために天然ゴム林に竹や果樹などを混植して育てる「アグロフォレストリー農法」の普及を推進するなど農園の維持を支援している。
マヒドン大学は、バンコクに本拠地を置く国立大学で、タイの大学ランキングで第1位となっており、天然ゴム研究でも優れたリーダーシップを発揮。
また、プリンス・オブ・ソンクラー大学は天然ゴム栽培が盛んなタイ南部で最古の国立大学で、横浜ゴムの天然ゴム加工会社のY.T. Rubber Co., Ltd.(ワイ・ティー・ラバー)が所在するスラタニに共同研究先のキャンパスを有している。