事業分割の理由は、同社創業の原点ともいえる製鉄事業に加え、近年はカーボンコンポジット製品などの先端製品の開発を行うテクノロジーメーカーとしての側面があり、これが投資家達にとって複雑に映り、複数の業界に跨がる事業構造が業績の足かせになっているとの意見があった。
その他、前CEOのハインリヒ・ヒージンガー氏の電撃辞任や監査役会会長のウルリッヒ・レーナー氏の辞職の他、昨年来よりスポークス活動に於いても、事業拡張の戦略構築で経営上の混乱が見られていた。
なお現行の旧社となるティッセンクルップAGは、ドイツ製鉄業の中心地であるドイツ・エッセンに本社を構え、1811年創業のクルップと1867年創業のティッセンが1999年に合併して誕生したドイツ製鉄業界最大の企業である。
現在時点では、世界約80カ国に拠点を持ち、2014-2015年度の売上高は428億ユーロ(およそ5兆6千億円)、同時点では従業員数154,906人を配していた多国籍企業であり、日本でも東京都・羽咋市・豊田市・広島市・北九州市に拠点を持っている。
元来、企業設立の経緯から鋼材を中核とした素材開発に強みを持つ産業グループであったのだが、昨今は新たな事業の地平を目指し、自動車や機械工学、産業用のハイテク部品の開発・生産に注力してきた。
自動車業界では、カムシャフト、シリンダーヘッドモジュール、クランクシャフト、ステアリング、ダンピングシステムなどの他、鋼材開発分野に於けるマテリアル領域で存在感を示していた他、鍛造並びに冷間鍛造プロセス技術の開発でも世界の自動車バリューチェーン全体で、一定の役割と立ち位置をその歴史の中に印してきた。
最近の動きでは、先の2018年3月2日に約1億ユーロを投資し、東欧ハンガリーにドイツ国内および海外向けの自動車OEMの電動パワーアシストステアリングシステム とバルブトレインシステム部品の製造拠点の稼働を開始。今や欧州自動車産業の主要プレイヤーに成長した当地で、スプリングやスタビライザーの製造拠点として新たな別工場も建設中であるとしていた。( MOTOR CARSから転載 )