帝人フロンティアは、7月30日、欧州を中心に自動車向け内装材の生産・販売を展開するJ.H. Ziegler(ジーグラー社)の全株式を取得し、完全子会社化することを発表した。なお、買収金額は、約125百万ユーロとなる。
これにより、同社は欧州における自動車向け内装材の生産および販売拠点を取得し、欧州をはじめとする同事業のグローバル展開を加速、企業価値の向上を目指すとしている。
[背景]
帝人フロンティアは、2017年4月に帝人の産業用ポリエステル繊維事業を統合し、衣料用繊維と産業資材の両分野で事業を展開。
産業資材分野では自動車関連領域を中核事業の1つとして掲げ、高機能内装材(シートファブリック、天井材、吸音材など)やゴム補強材(タイヤコード、ホース用コード、伝動ベルト用コードなど)、エアバッグ用基布など、様々な製品、ソリューションを市場に提供している。
自動車業界では、近年、環境規制の強化によるEV化や自動運転技術、カーシェアリングの進展などによる大きな環境変化が現れており、快適性や静音性を追求した車内空間に対するニーズが益々高まっている。
同社はこうした変化を大きなビジネスチャンスと捉え、特に音を制御して快適空間を生み出す制音機能(吸音、遮音、静音)をコアとした製品の開発・生産・販売により制音事業の拡大を図っていると云う。
一方、1864年創立の不織布メーカーであるジーグラー社は、長年、不織布を用いた自動車向け吸音材を製造・販売。欧州・中国を中心に広く事業展開している。
また、保有する生産・加工技術を活かし、カーシートの表皮材とクッション構造体との緩衝材であるシートワディング材で、本革シートの課題であったシワの発生抑制による表皮材の高級感維持、高い機能性を持つベンチレーションシートなどを実現するソリューションを提供している。
こうした中、高機能内装材の事業拡大に向けて、欧州における生産・販売体制の構築を目指す帝人フロンティアと、今後成長が予想される自動車吸音材市場に向けて、さらなるグローバル展開を図るジーグラー社のニーズが合致し、このたびの買収に至ったとのことだ。
[今後の展開]
帝人フロンティアは、今回のジーグラー社買収により、欧州、北米、アジアにおける生産・販売拠点を取得し、今後、自動車事業のグローバル展開を加速。買収による期待効果として主に以下の3点を挙げている。
①ジーグラー社は、多層構造体を製造する不織布コンポジットメーカーとして、顧客のニーズに応じ最適な多層構造を設計できるデザイン力を有している。EV化などにより発生音の性質が変化する中、同社の技術力・デザイン力により新規吸音材の提案を進めるとともに、制音技術を活かして他用途への拡大も図っていく。
②帝人フロンティアが有する原糸・原綿からの研究開発・生産機能を活用して、超極細繊維を用いた吸音効果の高い新たな吸音材の開発を進め、他との差別化を図る。
③帝人グループ全体としては、複合成形材料事業の米州拠点であるContinental Structural Plastics社の生産・販売体制、ジーグラー社の販売チャネルを活用し、車輛内外装関連の新たなビジネスを展開するなど、シナジーを追求していく。
[ジーグラー社について]
ジーグラー社は、長年培ってきた不織布の生産・加工技術を応用し、優れた静音性能を有する吸音材製品を市場投入し、欧州で高いシェアを有する欧州自動車市場におけるシートワディング材メーカー。欧州に4ヵ所の工場を有し、2014年には中国・浙江省に工場を新設し、グローバル展開を加速している。
<ジーグラー社概要>
名称:J.H. Ziegler GmbH
所在地:
本社:バーデン=ヴュルテンベルク州 オーベルアハーン
生産拠点:ドイツ3拠点、ハンガリー、中国
代表者:CEO:Diedrich von Behr
事業内容:
不織布をベースとした自動車向け吸音材コンポジット、多層シートワディング材の開発・製造・販売
売上高:69.0百万ユーロ(2017年12月期)
設立:1864年
従業員数:約400名
生産品目:
吸音材コンポジット、カーシート用ワディング材、家具用不織布・建材用断熱材 他
[買収の概要]
買収金額:約125百万ユーロ
実施時期:2018年8月(予定)
出資元:帝人フロンティア株式会社
資金調達:手元資金および新規調達で充当(予定)
■J.H. Ziegler(英語):https://www.ziegler.eu/en/home/