帝人は3月2日、LS-EV(Low Speed Electric Vehicle:低速EV)の軽量化に向けた開発パートナーである豪Applied EV社(AEV社)と共同で、ポリカーボネート樹脂製の近未来モビリティ向けソーラールーフを
開発したと発表した。
その背景、今回開発のソーラールーフについて、そして今後の展開として、帝人では以下のように述べている。
1.背 景
(1)近未来のモビリティ像として「CASEやMaaSが示される中、環境負荷低減や超高齢化社会への対応を強化すべく、世界各国で自動車の電動化や自動運転化に向けた技術開発が進んでいる。
(2)また、世界的な指標として、自動車の動力源であるガソリンや電気などの製造過程から完成車の駆動に至るまでのエネルギー効率を総合的に評価する「Well to Wheelゼロエミッション」が掲げられるなど、自動車社会にはさらに大きな変化の到来が予測される。
(3)こうした中、帝人とAEV社は、将来のEVに求められる技術基盤を獲得・整備するため、2019年よりLS-EVの共同開発を進めており、最近の成果として、用途に合わせた車体を搭載して自動走行が可能な多目的LS-EV向けのプラットフォーム「Blanc Robot」を開発する。
共同開発したソーラールーフ搭載のAEV社製LS-EVプロトタイプ
2.今回開発のソーラールーフについて
(1)今回開発されたソーラールーフは、帝人のポリカーボネート樹脂「パンライト」グレージングを表層に用いた、太陽電池搭載のLS-EV向けルーフ。
(2)同社が長年培ってきたポリカーボネート樹脂グレージングに関する知見を駆使し、ガラスでは難しい車体ルーフに適した曲面形状を一体成形することで、求められる強度や剛性を実現。
(3)また、ポリカーボネート樹脂は耐衝撃性に優れる一方で耐候性に課題があり、屋外での長期間の使用に向けては適切な加工が必要となるが、「パンライト」グレージングは、当社独自のハードコート技術を活用することにより、自動車に要求される10年相当の耐久性を実現している。
(4)このソーラ―ルーフに搭載した太陽電池セルの出力は、豪州の日照条件下でのテストにおいて、一般的なソーラーパネルと同等の約330Wを記録している。
(5)さらに、帝人とAEV社はソーラールーフのエネルギー効率を実証すべく、一般車両向けLS-EVを想定した10kWhのバッテリー搭載のプロトタイプ車体を製作し、「Blanc Robot」に装填して、豪州の日照条件下で試験を行ったところ、走行距離が30km~55km(最大約30%)伸びることが確認された。
3.今後の展開
(1)帝人とAEV社は、各部品に帝人の素材や技術を活用した量産向け軽量ⅬS-EVを、2022年後半に実用化することを目指しており、このたび開発したソーラールーフの技術向上を図りながら、「Well to Wheelゼロエミッション」の実現に向けた取り組みを進めていく。
(2)帝人は、AEV社との取り組みを一層強化していくことにより、近未来のモビリティへのニーズを先取りし、自社の高機能素材や設計、デザイン、複合化技術による技術提案力を強化していく。
(3)帝人は、注力すべき重点領域として「環境価値ソリューション」を掲げており、持続可能な循環型社会の実現に貢献するソリューションを提供することで、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」となることを目指す。