帝人は3月30日、Applied EV社(以下「AEV社」)と、LS-EV(Low Speed ElectricVehicle:低速EV)のプロトタイプを共同開発したことを発表した。
近未来のモビリティ像として「CASE」や「MaaS」が示される中、環境負荷低減や超高齢化社会への対応を強化すべく、世界各国で自動車の電動化や自動運転化に向けた技術開発が進んでいる。
また、世界的な指標として、自動車の動力源であるガソリンや電気などの製造過程から完成車の駆動に至るまでのエネルギー効率を総合的に評価する「Well to Wheelゼロエミッション」が掲げられるなど、自動車社会にはさらに大きな変化の到来が予測されている。
こうした中、帝人とAEV社は、将来のEVに求められる技術基盤を獲得・整備するため、2019年よりLS-EVの共同開発を進めている。そして、最近の成果として、用途に合わせた車体を搭載し、自動走行が可能な多目的LS-EV向けプラットフォーム「Blanc Robot」、および帝人のポリカーボネート樹脂「パンライト」製のグレージングを表層に用いた、太陽電池搭載のLS-EV向けルーフを開発。今回、LS-EVのプロトタイプを発表したという。
帝人は、近未来のモビリティへのニーズを先取りし、自社の高機能素材や設計、デザイン、複合化技術による技術提案力を強化することで、「Well to Wheelゼロエミッション」の実現に向けた取り組みを一層強化していくとしている。
■LS-EVプロトタイプについて
今回開発されたLS-EVのプロトタイプは、帝人の軽量・高強度素材、加工に関する最先端技術、成形ノウハウと、AEV社が保有するLS-EVの基本設計や、低エネルギーでの駆動・制御などに関する技術を組み合わせて設計したもので、4名の乗車が可能だ。
車体プラットフォームには、低エネルギーでの走行が可能な「Blanc Robot」を使用しており、最適なエネルギー効率を発揮。また、無人走行システムにも対応することができる。
車体の主要構成部である窓やドアには、軽量で耐衝撃性に優れる帝人のポリカーボネート樹脂「パンライト」製のグレージングが使用されている。「パンライト」は赤外線遮断性にも優れているため、室内の温度上昇を抑えることもできる。「パンライト」製のグレージングを曲面形状に一体成形したルーフには、ソーラーパネルと軽量な給電モジュールを搭載し、豪州の日照条件下での試験において、一般的なソーラーパネルと同等の約330Wを記録した。
車内の断熱・吸音材には、当社グループの帝人フロンティア(株)が展開するポリエステル製タテ型不織布を用い、車外の熱気や冷気による車内温度への影響やロードノイズによる社内騒音を低減させることにより、車両のエネルギー効率や快適性の向上に貢献している。帝人によると、これらによるエネルギー効率は、両社が目標としてきた歩行者レベルの消費エネルギーとほぼ同等で、自動走行車としては過去最高レベルのものだという。