帝人は、2月27日、航空・宇宙用途向けに高耐熱熱硬化プリプレグ(*)を製造・販売する米国のレネゲード社(Renegade Materials/本社:米国オハイオ州)の全株式を取得し、完全子会社にすると発表した。
帝人グループは、世界的な環境規制の強化に伴う低燃費化の要請に応えるため、「軽くて強い」高機能素材を展開。特に炭素繊維事業において、航空機分野に注力し、炭素繊維原糸からCFRP(炭素繊維複合材料)に至るまでのラインナップを拡充し、用途開発を強力に推進している。
また、世界の主要な航空機メーカーが製造する航空機の一次構造材、二次構造材向けに、30年以上にわたり炭素繊維「テナックス」を供給。先ごろ米国・ボーイング社の一次構造材向けに認定された熱可塑性プリプレグなど、将来の最新鋭機に向けた新たな中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでいる。
こうした中、帝人では、さらなる用途開発の推進とグローバルでの事業拡大を目指し、航空・宇宙用途でニーズの高まりが見込まれる高耐熱熱硬化プリプレグに関し、優れた技術と販売チャネルを有するレネゲード社の買収を決定した。
*)プリプレグ: 炭素繊維シートに樹脂を染み込ませたもの
レネゲード社は、1993年創立の樹脂メーカーを母体として、2007年に設立された航空・宇宙用途向け高耐熱熱硬化プリプレグメーカーで、耐熱性樹脂について高いノウハウを保有。
特に、技術的に難しいとされる、低毒性原料を用いたポリイミド樹脂により高耐熱性と熱サイクル耐性に優れるプリプレグの製造ができることから、欧米をはじめとする航空機メーカーや航空機エンジン関連メーカーなどから高い信頼と採用実績を得ていると云う。
今回の買収で、帝人は、エンジン部材などへの適応が可能で、未来の最新鋭航空機に向けたラインナップとなる高耐熱性プリプレグを獲得。
帝人が蓄積してきた炭素繊維や中間材料のノウハウや、評価設備、販売チャネルなどを活用することで、レネゲード社の製品をより幅広く展開し、航空・宇宙用途向け炭素繊維事業のグローバル展開を、より一層強化するとしている。
さらに、現在米国サウスカロライナ州に建設中の炭素繊維製造拠点であるテイジン・カーボン・ファイバーズ(2020年度中に稼働開始予定)や、米国テネシー州で炭素繊維販売事業を展開するテイジン・カーボン・アメリカ、欧州の炭素繊維事業会社であるテイジン・カーボン・ヨーロッパとも連携し、グローバル市場における対応力を強化。
こうした展開により帝人は、航空・宇宙用途向け炭素繊維製品のマーケットリーダーとしての地位を確固たるものとし、2030年近傍までにこの用途で年間900百万米ドル超の売上を目指すとしている。
[買収の概要]
– 実施時期:2019年4月(予定)
– 出資元:Teijin Holdings USA Inc.(米国持株会社)
– 資金調達:手元資金で充当(予定)
<レネゲード社の概要>
– 社名:Renegade Materials Corporation
– 設立:2007年
– 拠点:米国 オハイオ州 マイアミズバーグ(本社・工場)
– 事業内容:航空機向けプリプレグ、樹脂、接着剤などの製造・販売
■Renegade Materials Corporation:http://www.renegadematerials.com/