帝人株式会社(本社:大阪市北区、社長:鈴木 純)は7月4日、チェコの自動車向け複合材料部品メーカーであるベネット・オートモーティブ社(Benet Automotive s.r.o.、本社:チェコ ムラダー・ボレスラフ市、CEO:Kamil Suchan)の全株式を取得し完全子会社したと発表した。(坂上 賢治)
帝人がチェコの複合成形材料企業を買収した理由は、予てより帝人が軽量・強靱な高機能素材や、独自の設計能力を駆使したマルチマテリアル技術を背景に、世界の自動車メーカーに対して部品供給パートナーとなることを目指しているため。具体的には、欧州・北米・アジアの3極での事業拡大を照準に据えている。
なかでも特に欧州で帝人は、2018年8月にポルトガルの自動車向け複合材料部品メーカーのInapal Plasticos社(以下「イナパル社」)を買収した他、2017年1月に北米最大の自動車向け複合材料部品メーカーであるContinental Structural Plastics社(以下「CSP社」)のフランス現地法人であるCSPヨーロッパでSMC(Sheet Molding Compoundの略。熱硬化性樹脂をガラス繊維に含浸させシート状にした成形材料)の工場新設を決めるなど、自動車向け複合成形材料事業の拡大を推進中だ。
こうした中で帝人は、欧州地域での提案力強化、販売チャネルのさらなる拡大を図るべく、有力自動車メーカーが生産拠点を構える中東欧の中心部にあたるチェコに本拠地を持つベネット・オートモーティブ社の買収を決めた。
ちなみにベネット・オートモーティブ社は、自動車メーカーに部品を提供するTier1メーカーであり、炭素繊維複合材料(CFRP)やガラス繊維複合材料(GFRP)の成形技術、および自動車部品の塗装や組み立ての設備などを有している。
具体的な成形技術では、オートクレーブ成形(型にプリプレグを積層してバッグで覆い、オートクレーブと呼ばれる耐圧性の加熱装置内でバッグやプリプレグ内の空気などを除去して真空化し、加熱・加圧により硬化させる成形方法)やRTM成形(Resin Transfer Moldingの略。金型の中に炭素繊維シートを配置した後に樹脂を注入し、加熱により硬化させる成形方法)に加え、リム成形(RRIM:Reinforced Reaction Injection Molding)と呼ばれるポリウレタンを用いた低圧での射出成形技術などに特徴があり、フォルクスワーゲン、メルセデス、BMW、アウディ、シュコダなど、欧州の自動車ブランドへの幅広い採用実績を持つ。
帝人は今買収を、イナパル社の買収に続く自動車向け複合成形材料事業における欧州展開強化の布石と位置づけており、欧州の自動車メーカーへの部品供給パートナーとしてさらなる展開を図っていく構え。
具体的にはベネット・オートモーティブ社の知見を加え、帝人とCSP社が有する素材や成形に関する技術や人財との融合を図る。これにより軽量性、強度のみならず、デザイン、生産性、コスト効率といったさらなる顧客ニーズにも応えるべく、ソリューション提供力を拡充していくとしている。事業数値では2030年近傍に、売上2,000百万米ドル規模への拡大を目指す。
ベネット・オートモーティブ社の概要は以下の通り
社名:Benet Automotive s.r.o.
拠点:チェコ ムラダー・ボレスラフ市(本社・工場2拠点)
– チェコ ミロヴィツェ市(工場)
– ドイツ インゴルシュタット市(工場)
売上高:35.2百万ユーロ(2019年3月期)
従業員数:約720名
事業内容:自動車向け複合材料/部品の設計・成形・加工