住友商事は6月2日、東北大学、OneSky Systems, Inc.(以下「OneSky」)の3者が、多数のエアモビリティが飛び交う未来の実現に向け、量子コンピューティングを活用したリアルタイム三次元交通制御に関する実証実験を2021年6月から12月にかけて実施すると発表した。
エアモビリティは、都市部での移動時間短縮や渋滞解消、離島や山間部における移動の利便性向上、緊急搬送や物資輸送の迅速化などが期待され、世界各地で社会実装に向けた開発が進んでいる。
2030年代後半には、多数の大小さまざまなエアモビリティが地上を飛び交うことが想定され、その実現にはリアルタイムで最適航路・運航ダイヤを管制することが求められる。この設計には、飛行性能、積載内容、目的地といったエアモビリティ一機当たりの変数に加え、気象条件や緊急事態などの外部変数を組み合わせた膨大なデータを瞬時に計算する必要があるが、従来型のコンピューターでは処理能力の限界により実現不可能とされている。
この実証では、量子コンピューターを活用して複数台機の最適航路・運航ダイヤのリアルタイム設計を行う。住友商事は実証の企画・運営を行い、OneSkyの無人機管制システムに対して、東北大学の量子コンピューティング技術を応用し、高層ビルが立ち並ぶ都市部でのエアモビリティ航行を想定した高精度軌道シミュレーションを実施する。
住友商事は、米州住友商事会社を通じて、2020年4月に OneSkyに出資して、エアモビリティ事業を推進している。また、2021年3月には量子コンピューティングの利活用によって社会変革をリードするQuantum Transformation(QX)プロジェクトを立ち上げ、さまざまな事業領域における量子技術の実装を目指している。
東北大学は量子コンピューティングを用いた数々の実証実験を行っている。これまで量子コンピューティング技術の普及、産業での応用を推進しており、近年ではその成果として、津波など災害時の避難経路探索や工場内の無人搬送車の効率的な配送技術を発表した。また、2021年3月には住友商事と共同研究契約を締結し、量子コンピューターの実業への応用を加速させている。
OneSkyは、エアモビリティ社会に不可欠となる無人機の安全航路設定を行う、無人機管制システムの開発・販売を手掛けている。住友商事と共同し、無人機運行管制に欠かせないシステムの構築を目指している。
3者は量子コンピューターを活用したこの実証を通じて、最適航路・運航ダイヤのリアルタイム設計の実現を目指し、エアモビリティの社会実装の加速に寄与するとしている。