ブリヂストンは1月20日、ゲノムのビッグデータ・ソリューション企業であるNRGene社との共同研究により、「グアユール」の複雑なゲノム配列を高精度解読することに成功したと発表した。同社は、2017年から天然ゴム資源の多様化によるタイヤ原材料のサステナブル化を目的として、グアユールの品種改良に向けたゲノム解析の研究をNRGene社と共同で行っており、今回の研究開発の成果がゴム生産性の高い品種のグアユール開発に大きく貢献するものとしている。
グアユールは米国南西部からメキシコ北部が原産の、降雨量の少ない乾燥地帯で栽培することが可能なキク科の低木(灌木)で、熱帯で栽培するパラゴムノキ由来のゴムに匹敵する成分を組織中に含む植物。ブリヂストンは、タイヤ材料として実用化すべく、グアユール由来のゴムの生産性向上や物性改良に向けた研究開発を進めている。
今回、NRGene社との共同研究により遺伝子情報が可視化されたことで、植物体中のゴム含有量など、重要な形質の遺伝的背景の理解を深めることが可能となり、生産性の高いグアユールの育種を加速させることが期待される。今後、プロセスの最適化による物性改良やアプリケーション(用途)開発の成果と組み合わせることで、2020年代にグアユールゴムのタイヤ材料としての実用化を目指す。
ブリヂストンでは、グアユールゴムの実用化に向けてオープンイノベーションを推進しており、今回同社の持つグアユールに関する知見とNRGene社のゲノム解析に関する技術を融合させることで、より短期間で実用化に向けての重要な成果が得られたとしている。
2050年には全世界の人口が96億人にも達し、自動車の保有台数も24億台を超え、タイヤ生産に必要な材料量も増えていくと予想される。また、SDGsが示しているように、経済成長と環境負荷のデカップリングが求められている。現在タイヤ原材料となる天然ゴムは、「パラゴムノキ」から生産されており、産地が東南アジアに集中していることから、病害リスクや栽培面積の拡大に伴う熱帯雨林の減少が課題になっている。この課題を解決すべく、ブリヂストンでは天然ゴム資源の多様化に向けた取組みとして、グアユールの研究開発を行っている。天然ゴム資源の安定供給に貢献する技術を通じて、将来にかけて環境負荷低減と持続可能な事業を両立していきたいとのことだ。
同社は、「2050年にサステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社であり続ける」ことをビジョンとして掲げており、事業の成長と環境影響や資源消費の拡大を切り離す「デカップリング」への挑戦をさらに進めていくため、新たな環境中期目標「マイルストン2030」を設定した。イノベーションでソリューションを提供し、安心・安全な移動を支えると共に、再生可能資源、再生資源をより広く活用しながらサーキュラーエコノミー・CO2削減に貢献するなど、環境へのインパクトをさらに改善していきたいとしている。