ソニーCFOの十時裕樹副社長
ソニーは10月28日、2020年度第2四半期(4~9月)連結決算を発表した。それによると、売上高は前年同期比0.9%増の4兆824億円、営業利益が同7.1%増の5461億円、当期純利益が同103.8%増の6928億円と、コロナ禍でも増収増益を達成した。通期業績見通しも上方修正した。(経済ジャーナリスト・山田清志)
第2四半期としては過去最高の営業利益
「米国政府による中国特定大手顧客向けの輸出規制強化がイメージセンサー事業に大きく悪影響を及ぼしたが、新型コロナによる巣ごもり需要はゲーム事業などに好影響を与えている。急速に大きく変化する需要環境においては、多様な事業のポートフォリオを持つことがレジリエンスを高めており、新たな事業拡大の機会を得ている」とCFOの十時裕樹副社長は総括し、「営業利益は第2四半期としては過去最高となった」と付け加えた。
第2四半期(7~9月)で特に好調だったセグメントはゲーム&ネットワークサービス事業(G&NS)で、売上高が前年同期に比べて522億円増の5066億円、営業利益が399億円増の1049億円だった。
自社製作ソフトウェア「ゴースト・オブ・ツシマ」の大ヒットや巣ごもり需要による「プレイステーション・プラス」の会員数増加などにより、ソフトウェア、ネットワークサービスともに好調に推移。プレイステーション5(PS5)の発売を控えたハードウェアを除く、すべてのカテゴリーで増収となった。
「プレイステーションユーザーの総ゲームプレイ時間は、ピークとなった4月からは落ち着いているものの、9月でも前年同期比約30%増となっている」と十時副社長は話し、年末発売予定のPS5についてこう述べた。
「PS5の初年度の販売台数については、PS4の発売初年度実績である760万台以上の達成を目指す。PS5対応ソフトウェアについては、プレイステーションエクスクルーシブの良質な自社製作タイトルに加えて、パブリッシャー各社との協業により、ローンチのタイミングでは歴代最多のタイトルをラインアップする。魅力的なソフトウェアに加えて、プレイステーションのブランド力、世界有数のゲームエコシステム、強固なユーザーコミュニティがそろい、過去最高の形でPS5の発売を迎えることになる。今後はネットワークサービスのさらなる強化により、コミュニティの裾野を広げ、リカーリング収益の成長を加速させる。最終的には、PS4の累計出荷1億台を超えたいと考えている」
下期は「鬼滅の刃」が業績に大きく貢献か
音楽事業も非常に好調で、売上高が前年同期に比べて116億円増の2309億円、営業利益が154億円増の529億円だった。主にストリーミングサービス売り上げの増加や、日本における米津玄師のアルバムの大ヒットなどが貢献し、ストリーミングサービスは前年同期比18%増という高い成長を続けているという。しかも、下期はさらに成長が期待できそうだ。
というのも、10月16日に連結子会社のアニプレックスが製作・配給に関わる『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が封切られ、日本で上映された映画では、史上最速で公開10日での興行収入100億円を突破したからだ。質疑応答でも、鬼滅の刃についての質問が相次いだ。十時副社長は通期業績への貢献について、公開されたばかりということで明らかにしなかったが、大いに期待している様子だった。
また、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)事業も、売上高が前年同期比112億円増加の5047億円、営業利益が126億円増加の540億円と増収増益を達成した。
「2020年2月から新型コロナの影響をいち早く受けていた事業だったが、第2四半期はサプライチェーンの安定化やホームAV商品の巣ごもり需要やデジタルカメラなどの需要回復により、一旦事業は落ち着きを取り戻している」と十時副社長は説明したが、新型コロナ再拡大の可能性が高く、予断を許さない状況が続いていると言っていいだろう。
一方、映画事業とイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)事業は厳しい状況だった。映画の売上高は前年同期に比べて683億円減少の1923億円、営業利益は76億円減少の318億円と減収減益だった。
「新型コロナの影響により、劇場公開作品が大幅に減少していることや、メディアネットワークによる広告収入の大幅な減少が影響した。劇場公開については回復の兆しがあるものの、米国の主要都市では依然として劇場の閉鎖が続いており、主要スタジオは大型作品の公開を延期している。劇場再開後も映画公開スケジュールが過密になることで競争が激化し、収益の回復が遅れる可能性がある」と十時副社長は説明する。
稼ぎ頭だったイメージセンサーは米中問題で大幅減益
I&SS事業については、売上高が前年同期比36億円減少の3071億円、営業利益が265億円減少の498億円で、減収大幅減益だった。「去る8月17日に発表された米国政府による輸出規制に従い、中国の特定大手顧客向けの製品出荷を停止している。このような状況を踏まえながら、設備投資、研究開発、顧客基盤などの観点から事業戦略の見直しをさらに進めていく」と十時副社長。
ただ研究開発費については、より幅広いスマートフォン顧客からのニーズに応え、かつ将来の技術面での競争優位性を維持・向上していくため、削減はしない方向だ。そして、2021年度には汎用センサーの販売増による市場シェアの回復、2022年度には高負荷価値商品による事業収益性の回復を成し遂げ、モバイルイメージセンサー事業を再度成長軌道に戻せるように取り組んでいくそうだ。
通期業績見通しについては、売上高が8月公表値に比べ2000億円増となる8兆5000億円(前年同期比2.9%増)、営業利益が800億円増の7000億円(同17.2%減)、当期純利益が2900億円増の8000億円(同37.4%増)と、大幅な上方修正をした。
「2020年度は、I&SSでの特定大手顧客にかかる業績への悪影響を見込んではいるが、グループ全体では中長期的な成長モメンタムに変化はない。コロナ禍であっても、経営力の強化、事業の成長は可能であるとの確信を得つつある。2021年度は次期中期経営計画がスタートする。再度、利益成長の軌道に戻し、もう一段の成長を目指す」と十時副社長は力強く話していた。