ソフトバンクと国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)は、「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」の設置に関する覚書を、4月11日に締結した。
同センターでの共同研究を通して、まず次世代の革新的電池であるリチウム空気電池の実用化に向けて連携を開始する。
「あらゆるモノ」がインターネットにつながるIoTでは、モノから情報を取得すること(センシング)が重要となるが、これらのセンシングデバイスが至る所で長期間にわたって動作するためには、高性能な電池が必要となる。
今回、両者が実用化を目指すリチウム空気電池は、空気中の酸素と化学反応することでエネルギーを生成し、これまでのリチウムイオン電池に比べ、重量エネルギー密度が5倍以上となる理論上究極の蓄電池。
IoT時代に向けて、さまざまなセンシングデバイスやウエアラブルデバイスなどにも長時間装用、駆動ができる軽量な電池として親和性が高いことに加え、大容量の特性を生かしてドローンなどの飛行物体、ロボティクス分野などあらゆる産業への拡張性を持つ電池となるとしている。
両者は今後、リチウム空気電池の研究開発を重ね、2025年ごろの実用化を目指す。
ソフトバンクは、第1弾となるリチウム空気電池の共同研究の他に、同センターでの活動を通して、センシングやウエアラブル分野、飛行体分野などにおけるIoT時代に欠かせないさまざまな技術開発を加速させ、さらなる情報革命を進めていくとしている。
またNIMSは、今回の連携が、基礎研究の成果が企業との実用化研究に結び付く好例になると捉えると共に、「2025年までに大学・研究開発法人等に対する企業の投資額を2014年の水準の3倍とする」政府目標にも沿ったものと考えているとコメント。
また、今後リチウム空気電池の研究開発を加速させ、政府目標であるSociety 5.0(※1)の実現に貢献していくとしている。
なお、同センターで共同研究を行うリチウム空気電池は、文部科学省委託事業「統合型材料開発プロジェクト」による基礎研究(※2)の成果を、科学技術振興機構「先端的低炭素化技術開発プログラム‐特別重点領域『次世代蓄電池(ALCA-SPRING)(※3)』」で発展させたものを基としているとのことだ。
※1:狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、政府の第5期科学技術基本計画において日本が目指すべき未来社会の姿として提唱された。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会の実現を目指している。Society5.0の実現のためには、IoT(Internet of Things)の普及が前提と考えられていますが、その実現のためには小型・高容量で低コストの電池が大量に必要になる。
※2:2009年10月、グリーンイノベーションを目指したナノテクノロジー材料開発を推進するための文部科学省委託事業を行う研究拠点としてNIMS内にナノ材料科学環境拠点(GREEN)を新設。最高の理論エネルギー密度を有するリチウム空気電池をいち早く取り上げ、特別推進チームを設けて研究開発を行っている。
※3:2010年に発足した政府の温室効果ガス排出の低減を目指した低炭素技術開発に特化した研究プログラムALCAに、次世代蓄電池の研究成果の社会実装を加速するため、電池という出口に向かってトップダウン型の研究を推進するALCA-SPRINGが2013年に10年計画でスタート、そこでNIMSは中核的な役割を果たしている。
■リチウム空気電池の詳細(PDF):
https://cdn.softbank.jp/corp/set/data/group/sbm/news/press/2018/20180411_01/pdf/20180411_01.pdf