産業界のカーボンニュートラルへの取り組みは加速化しており、EV(電気自動車)はシェア拡大の一途をたどっているが、そこで求められるのが安定した充電システムである。アメリカ・マサチューセッツ州に本拠地を置くWiTricity Corporation(本社:アメリカ・マサチューセッツ州、CEO:Alex Gruzen、以下ワイトリシティ)は、ワイヤレス充電の分野で、独自の磁界共鳴技術によって確固たる地位を築いている。
そんな中、9月13日〜15日の日程で「第3回 脱炭素経営 EXPO【秋】」が、千葉県の幕張メッセで開催され、エネルギー商社であるシナネン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:清水 直樹、以下シナネン)がEV向けワイヤレス充電システム「WiTricity Halo™(ワイトリシティ・ハロ)」のモックを国内初公開した。先に、親会社であるシナネンホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:山﨑 正毅、以下シナネン HD)が、ワイトリシティと日本市場のマーケティングに関して基本合意を結んでおり、シナネンでは今回の発表を皮切りに、広く日本国内での認知拡大と様々な業界との接点によりEVユーザーの利便性向上やエネルギー問題解決等に向けた社会インフラ化を図っていく考えだ。
今回発表された「WiTricity Halo™」は、地上に設置された送電パッド、EVに取り付けられた車両側の受電パッド(レシーバー)、高出力電子機器が設置されたウォールボックスの3点で構成され、送電パッドのコイルとレシーバーのコイルとの間で、磁界を共鳴させる「磁界共鳴方式」によって電力を供給する。非常にコンパクトでスマート。狭い場所にも設置することが可能だ。
「WiTricity Halo™」の大きな独自性は、何といっても高いワイヤレス性にある。非接触の充電技術により、充電器に車を近づけるだけで受電できる。例えば、一般的な携帯電話の充電の場合、機器が直接触れていないと充電できない。しかし「WiTricity Halo™」の場合は、雪や水、アスファルトであっても電流に干渉せず、電流効率もなんと91〜93%ほどという。従来のプラグイン型の充電システムと比べ、EVと充電機器とをケーブルでつなぐ必要がなく、EVを送電パッドの上に停車させ、エンジン(パワースイッチ)を切るだけで、自動で給電が開始されるようになるため、充電時の利便性が飛躍的にアップすることになる。また、全て埋め込み式のため、表面に出るケーブルやプラグの破損・劣化の心配がなくなり、メンテナンス性も向上する。
参考(充電方法):WiTricity公式YouTubeチャンネル「How Easy Could it Be to Charge Your EV?」
日本国内では6kWと10kWの2種類の出力の製品を展開予定。今後の国内における法規制の動向によっては、さらに高出力な製品も検討しているとのことだ。
「WiTricity Halo™」は、米国では2023年内に発売予定であり、アメリカのTesla(テスラ)や同Ford Motor(フォード)の一部EVには、ワイトリシティのワイヤレス充電システムに対応する後付けレシーバーキットと充電器本体のセットが販売開始となる予定だ。なお日本国内では、2024年に実証実験を進め、2025年にも発売を開始したいと考えている。
さらに 「WiTricity Halo™」の可能性はこれにとどまらない。EVをワイヤレスでポートに常時つなげておくことで、分散電源・非常電源としての活用も期待できる。また、非常に薄型の送電パッドは、道路に埋め込めば走行中のEVに給電することが可能だ。そして、そこで蓄電したEVの電力を系統電源として供給することも将来的な構想に入っている。つまりEV充電だけではなく、この充電システムは前述の通り社会的なインフラとなる可能性を秘めているのだ。ここにエネルギー商社であり、燃料、電力供給の知見を持つシナネンが、ワイトリシティの販売協力をする意味と役割があると言えよう。同社専務取締役で、ワイトリシティ社のBoard of Advisorsでもある渡邉雅夫氏は「弊社の商社機能やネットワークを生かして、ワイヤレス充電システムを浸透させていきたい」と語った。