シーメンスと日産自動車、新型日産アリアの生産ライン構築で連携
シーメンスは8月30日、日産自動車・栃木工場に於ける日産アリアの生産ラインで、自社のオートメーション工程に係るノウハウとデジタル技術を提供する事で、車両生産初期の立ち上げを支援したと発表した。( 坂上 賢治 )
具体的には、栃木工場のアリアの生産ラインの立ち上げに於いて、制御機器の提供を筆頭に、生産計画策定からオペレーションに至る過程で、デジタル化された自動化工程を実現したという。
栃木工場で日産が導入したシーメンスのシステムアーキテクチャは、新世代パワートレインの加工と組立の標準化を目的としたものとなっており、ここに「セーフティPLC Simatic S7-1500」及び「ET200SP分散型 I/Oモジュール」が、OSS(Siemens One Single Solution)として搭載されたと記している。
これによりマネジメントレベルに至るエンドツーエンドの通信環境が実現。エンジニアリングフレームワークのTIAポータルも含め、全てのオートメーション機器を完全に統合したものとなったとしている。シーメンスによると、この結果、デジタル化した計画作成から透明性の高いオペレーションに至る迄、デジタル化されたオートメーション工程が完成したとしている。
シーメンスのIoT対応ハード&ソフトウェア、デジタルポートフォリオを活用
ちなみに今回の取り組みで、シーメンス AG取締役デジタルインダストリーズのセドリック・ナイケCEOは、「日産とは長年に亘り、主にソフトウェア分野で協力関係を築いて来ました。
実際、日産はシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア製品を設計と生産の最適化に活用しています。当社のエンドツーエンドの包括的なデジタルスレッドが、日産の製品ライフサイクル管理(PLM)プラットフォームの様々な情報源の連携を実現しています。
この新しい生産ラインの立ち上げは、両社の協業体制上での重要なマイルストーンになります。特に私が強調したいのは、気候変動、化石燃料の採掘限界、および厳しいCO2規制や環境面での規制が、電動パワートレインの開発や電気自動車生産の強力な推進力となっている事です。
そうしたなかシーメンスは、日産の生産設備のデジタル化と電子化を支援する事で、日産のカーボンニュートラル目標に今後も貢献していきます。今後も当社のノウハウと最先端技術の全てを投入し、柔軟性が高く、効率的で、何よりもサステナブルな自動車生産を実現します」と述べた。
長年に亘る両社の協力関係に基づく新たな取り組みを100%電気自動車に活かす
対して日産自動車・車両生産技術開発本部の平田禎治常務執行役員は、「ニッサン インテリジェント ファクトリー栃木では、モビリティの未来を創造しています。これにより、作業環境の改善だけでなく、ゼロ・エミッションの生産体制も実現出来ます。
当社は、新しい電気自動車の生産ラインをデジタル化するために、当社のイノベーションパートナーであり、産業オートメーションとデジタル化のリーディングカンパニーでもあるシーメンスと連携する事にしました。それはシーメンスが、同分野で必要とされる知見を持ち合わせているからです」と話す。
この発言を受けてシーメンスは、「自動車のインテリジェント化には、より高機能なECU(電子制御ユニット)を搭載する必要があり、新型日産アリアも同様です。シーメンスの診断システム「シディス・プロ(Sidis Pro)」は、既にす世界中の多くの自動車メーカーで採用実績があり、電気自動車の生産に於いてもその数々のメリットを発揮する事が出来ます。
これが日産の新たな生産ラインでは、ECUへのデータ書込みや車両電装品の検査を実施するために導入されています。Sidis Proは、車両の検査工程を最適にサポートする事により、高品質な車両生産を実現する、先進的な診断と検査データのマネジメントシステムです。
またSidis Proは、サーバー機能を用いて様々なデータを管理し、生産ラインのデジタル化にも貢献しています。また生産計画に応じて容易に変更でき、その変更点が迅速に展開出来るため、自動車生産では最大限の柔軟性を実現します。
このように同じソフトウェアを異なる用途に使用する事で、システムの標準化が可能となり、他の生産拠点でも少ないリソースで多くの業務をこなせるようになるでしょう。シーメンスは今後も日産の生産設備のデジタル化・電動化をサポートし、日産の掲げる日産インテリジェントファクトリーの実現へ貢献していきます」と結んでいる。