昭和電工は、アルミニウム合金と汎用の非晶性エンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート樹脂を接着剤を使わずに直接接合する画期的な技術を開発した。
アルミニウム合金と樹脂を接合するには、ボルト等で締結する機械的接合や、接着剤を用いた接着接合が主流だが、近年、樹脂材料の射出成形時に金属素材と直接接合する新たな技術が注目されている。
金属樹脂直接接合は、工程の簡略化、高い生産性、複雑形状でも加工可能などの優位性が期待される技術だが、これまでの金属樹脂直接接合技術の多くは、粗面化した金属表面に樹脂を注入して得られるアンカー効果をはじめとする機械的結合力に依存するため、ポリカーボネート樹脂に代表される非晶性エンジニアリングプラスチックとの接合は難しいとされていた。
昭和電工は今回、長年の事業で培ったアルミニウム合金と高分子化学の知見を活かし、特殊表面処理とプライマー処理を施したアルミニウム合金を使用することで、ポリカーボネート樹脂との直接接合を可能にする技術を確立した。
開発した接合技術では、アンカー効果だけではなく、化学結合力(注1)も併せ持つ画期的な接合方法になると云う。
また、一般的なポリカーボネート樹脂の成形条件で、25MPa(メガパスカル) 以上の実用上十分な接合強度(注2)を示す実験結果が得られていることから、接合強度を十分に発現させるための特殊な条件や付帯設備も不要。汎用性の高いポリカーボネート樹脂と軽量な金属であるアルミニウムを接合できることから、スマートフォンの筐体用途への適用が可能とのことだ。
昭和電工は今後、アルミニウムの表面処理技術やプライマーの塗工条件を最適化し、接合強度・耐久性を高める開発を進め、将来的には適合樹脂を拡充させ、より耐熱性の高いスーパーエンジニアリングプラスチックへの応用を実現。自動車部品用途での実用化を目指すとしている。
注1:同技術では、化学結合の中で最も強い結合である「共有結合」を接合機構の一つとしている。一般的に、共有結合は分子間力の約100倍の結合力があるとされる。
注2)接合強度25MPa:引っ張りせん断試験(ISO 19095)による試験結果。