芝浦工業大学の伊東敏夫教授(システム理工学部機械制御システム学科)は、7月3日、“確率共鳴”という現象を用いることで、より遠距離、広範囲にある物体を認識できる自動運転システム向け新技術を開発したことを発表した。
自動車の自動運転技術における物体認識技術において、歩行者などを認識するために現在用いられているのは主にLiDAR(light detection and ranging)と呼ばれるレーザーレーダーだ。
しかし、現状でLiDARでは、遠距離にある物に対する認識精度が低いという課題があった。
そこで、伊東教授は、この課題に対し、“確率共鳴”という現象を活用することを考案。
これは、ザリガニが外敵や水流の動きを感知する際、ノイズを加えた信号を出すことで、ある確率の下で信号が強まり、検知能力が向上する現象のことだ。
そして、これを応用したのが、今回発表された新技術。LiDARが出す信号に最適なノイズを加えることで、LiDARの遠距離認識性能の改良や遠距離での反射点群密度の向上が可能となった。
伊東教授の研究室では、実際に計測地点から20メートル以上80メートル以内の歩行者、二輪車、車両に対して実験を行い、認識性能の改善が確認できたという。
伊東教授によると、この技術は
「自動車だけでなく、自動運転ドローンや自律移動ロボットの外界センサへの使用も期待できる。
また、確率共鳴の応用に着目すれば、LiDAR以外の画像処理やレーダーへの応用展開することも可能となる」
という。
今後、伊東教授の研究室では、この技術の実用化の一歩として、シニアカーに装置を後付けして自律移動モビリティを開発し、複数の研究室との共同プロジェクトとして2020年の完成を目標に研究を進める予定だ。