シャープが11月4日に発表した2022年度第2四半期累計(4月~9月期)の連結決算は、売上高が前年同期比3.3%増の1兆2579億円、営業利益が同93.8%減の24億円、純利益が同75.7%減の103億円だった。この業績を受けて、通期業績見通しの営業利益、純利益を下方修正し、合わせて呉柏勲社長をはじめとした役員の報酬を減額すると発表した。(経済ジャーナリスト 山田清志)
2022年度上期連結業績
白物家電は売り上げ伸ばすも円安で利益減少
「2022年度上期は、米州とアジアのブランド事業や車載向けディスプレイなど、注力分野が伸長し、売上高が前年同期を上回ったが、急激な円安の進展とディスプレイ市況の悪化により大幅な減益になった」と沖津雅浩副社長は振り返った。
スマートフォンや家電の多くをアジアで生産しているシャープにとって、この上期の急激な円安は経営に大きな打撃を与えた。シャープの場合、対ドルで1円円安になると、売上高が年間で110億円のプラスになるが、営業利益は19億円のマイナスになるという。
2022年度上期セグメント別売上高
営業利益の前年同期に対する増減益要因は、売価ダウンにより65億円の減益、コストダウン・モデルミックにより67億円の増益、販売影響により41億円の減益、経費の減少により80億円の増益、為替影響により205億円の減益、堺ディスプレイプロダクトの関連費用により201億円の減益だった。
セグメント別の業績は、ブランド事業の売上高が前年同期比6.2%増の7030億円、営業利益が同59.8%減の157億円。そのうち、スマートライフは売上高が同10.8%増の2481億円、営業利益が同31.1%減の168億円、8Kエコシステムは売上高が同7.0%増の2954億円、営業利益が同29.0%減の81億円、ICTは売上高が同1.6%減の1594億円、営業損益が前年同期の31億円から93億円の赤字に転落した。
スマートライフでは、白物家電事業がアジアを中心にエアコン、洗濯機、冷蔵かが大きく伸長したほか、欧米では調理家電が大幅に売り上げを伸ばし、海外の白物家電事業は25%を上回る増収となった。国内についても、エアコン、洗濯機が伸長して大幅な増収になった。ところが、急速な円安によって減益になってしまった。ただ、第2四半期は、第1四半期よりも増益となって、利益率も改善しているという。
2022年度上期セグメント別営業利益
8Kエコシステムは、ビジネスソリューション事業、テレビ事業とも売上高が伸長。ビジネスソリューション事業は欧米を中心に大きく売り上げを伸ばし、約2割の増収となった。テレビ事業も中国や欧州で売り上げを下げたが、高付加価値化が進展している国内や米州・アジアで増収となった。しかし、営業利益については、欧州などでテレビ事業の抜本的な事業構造の見直しを進めており、それに伴う費用によって減益となった。
ICTついては、PC事業、通信事業とも第2四半期が第1四半期より増収となったものの、欧州や中国でのPCの減収が響いて減収となり、さらに円安が加わって営業赤字を計上。特にPC事業では、今後の収益改善に向け、欧州での構造改革を進めているそうだ。
純利益は93%減の50億円に下方修正
一方、デバイス事業は売上高が前年同期比2.1%減の5944億円、営業損益が前年同期の96億円の黒字から49億円の赤字に転落した。そのうち、ディスプレイデバイスは売上高が同6.9%減の4066億円、営業損益が93億円の黒字から123億円の赤字。エレクトロニックデバイスは売上高が同10.4%増の1878億円、営業利益が3億円から74億円に増加した。
「ディスプレイデバイスについては、ディスプレイの市況が厳しかったことに加え、中国ロックダウンによる生産や顧客需要への影響などで減収となり、堺ディスプレイプロダクトを連結にしたことや、想定以上に大型パネルの価格が下落したことなどから赤字になった」と沖津副社長は説明。そんななかでも、車載向けパネルやVR向けのパネルは伸長したそうだ。
2022年度連結業績予想
また、エレクトロニックデバイスについては、顧客の新製品発売に向けて速やかにデバイスを供給できたこと、前年同期は新型コロナウイルスによる生産への影響があったことの反動がプラスに作用して、収益が大きく回復した。
2022年度の通期業績見通しについては、売上高を前回公表値の2兆7000億円(前年度比8.2%増)に据え置いたが、営業利益を650億円から400億円減の250億円(同70.5%減)、当期純利益を500億円から450億円減の50億円(同93.2%減)にそれぞれ大幅に下方修正した。
「インフレや為替変動による需要の減速、エネルギーコストの上昇、さらなる円安の進展などをマイナス要因となるリスクと見ている。こうした環境認識のもと、“開源節流”に取り組んでいく。“開源”では、海外事業の拡大、高付加価値商材・サービスの展開、新製品・新規事業の加速を進め、また“節流”では、コスト構造の抜本見直し、不採算事業の構造改革、人員適正化などを図る」と沖津副社長は今後の方針について説明。
さらに「今期の黒字化を必達する姿勢を示すためにも、役員報酬や経営幹部の給与・賞与をカットし、経営陣が先頭に立ってこの難局を打開していく」と強い決意を示した。呉社長ら経営幹部の給与を2023年3月まで最大30%減額するほか、呉社長は年末の賞与を返上する。