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2020年5月19日【テクノロジー】

大幅減益のシャープ、社長交代で業績回復を目指す

山田清志

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 シャープが再び業績の低迷に苦しみ始めた。同社は2016年3月期に巨額の最終赤字となり、同年夏に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り、その主導のもとで復活を遂げた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で大幅な減益に陥った。

 

そこで、これまで会社を引っ張ってきた鴻海出身の戴正呉会長兼社長が会長兼CEOとなり、野村勝明副社長が社長兼COOに昇格し、新たな体制で業績回復を図ることになった。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

 

当期純利益が71.8%減の209億円に

 

 シャープが5月19日に発表した2020年3月期連結決算は、売上高が前期比5.4%減の2兆2712億円、営業利益が同37.3%減の527億円、当期純利益が71.8%減の209億円と減収減益となった。

 

 

「第1四半期から第3四半期までは想定通りに推移したが、第4四半期は新型コロナウイルスの世界的な流行により非常に厳しい事業環境となった。

 

しかしながら、着実にトランスフォーメーションを推進していることもあり、こうした状況下でも通期の最終黒字を確保した。

 

現在、こうした情勢変化への柔軟な対応を進めるとともに、8K+5GとAIoTをてこに、新規市場や新規事業領域での取り組みを推進している」

 

電話会見で野村副社長はこう説明し、新型コロナウイルスの影響は、売上高で約1780億円、営業利益で約360億円あったという。

具体的には、中国やASEANの工場が低稼働になったことで国内向けの商材を確保できなかった影響や、3月後半に一部量販店が営業を取りやめた影響で、通信や白物家電、テレビ、PCに影響があった。

 

中国では、販売店の営業停止や外出規制、工場の稼働停止などの影響があり、テレビや白物家電の販売が減少した。

 

ASEANでは、マレーシアやフィリピン、インドネシアなどで外出制限や経済活動制限が実施され、テレビや白物家電、ビジネスソリューションなどの売り上げに影響が出た。

 

欧州や米州では、ビジネスソリューションでコピーボリュームやサービス売り上げが減少したほか、欧州ではテレビ、米州では白物家電で影響があった。

 

また、デバイス製品では、自社や納入先の工場が稼働停止あるいは低稼働になったことなどから、2月以降、車載向けやスマホ向けの販売に大きな影響が出たそうだ。足元のサプライチェーンについては、段階的に正常化しつつあるとのことだ。

 


モバイル型ロボット「RoBoHoN(ロボホン)」を活用した接客サービス(5月20日発表)

 

戴会長とタッグを組んで立て直す

 

「各国では経済活動制限が緩和される動きが出ている。営業外損益などは予想しにくいものの、こうした流れが続けば、本業が回復し、売上高と営業利益については、2020年度の上期に2019年度の上期を、2020年度の上期には2019年度上期を上回り、2020年度通期では2019年度を上回る見通しだ」と野村副社長は説明する。

 

しかし、具体的な数字については、新型コロナウイルスの動向を予測することが困難なことから公表を控えた。第1四半期の業績が明らかになる8月をメドに通期の業績予想を公表するそうだ。

 

「2019年度は最終黒字を確保したが、厳しい状況は続いている。環境の変化に対応した柔軟な事業経営を行うとともに、トランスフォーメーションを継続し、業績の回復、財務体質の改善、株主の向上を図っていく。

 

同時に当社が持つ技術・リソースを積極的に活用して、製品やサービス、医療物資を提供し、社会に貢献していく」

 


三重工場に於けるマスク生産工程

 

こう強調する野村副社長は6月25日の定時株主総会後の取締役会で正式に社長兼COOに就任する。社長就任の打診は3月下旬にあったそうで、「シャープで育ってきたものとしてこの難局にしっかりと対応してやっていこうと考えて、就任要請を受けた」と話し、抱負についてこう述べた。

 

「新型コロナウイルスの影響で、2020年3月期第4四半期は減収減益となり、赤字になった。

 

2017年3月期第2四半期に鴻海がシャープに出資したときには赤字だったが、これを第3四半期には黒字化した。そのときには、戴氏が社長兼CEO、私が副社長兼COOという体制だった。もう一度、その体制でしっかりとタッグを組んで立て直す」

 

 

107年の歴史で最大のヒットがマスク?

 

やはり、シャープを立て直すには新たなヒット商品を生み出す必要があるだろう。シャープと言えば、これまでに「シャーペン」をはじめ、テレビ、電子レンジ、電卓、ワープロと次から次へと業界に先駆けて新商品を世に送り出してきた。

 

 

「107年の歴史で最大のヒット商品がマスクになってしまいそうな感じ、複雑な気持ち」。これは5月3日、自虐的なコメントで知られるシャープの公式ツイッターのつぶやきだ。

 

4月末に自社サイトでマスクを販売すると、アクセスが殺到して接続できなくなってしまった。抽選販売に切り替えても、アクセスは殺到して初回から3回目までの倍率はいずれも100倍を超えていたそうだ。

 


シャープ・ペンシルから鉱石ラジオへと続く同社のものづくり


クルーズ客船「飛鳥Ⅱ」のラウンジに置かれた液晶テレビ『AQUOS 8K』

太陽電池パネルを搭載した「プリウスPHV」実証車

 

このマスクに匹敵するような新たなヒット商品を生み出せば、シャープの未来は間違いなく明るくなるだろう。

 

山田清志
経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。