IEE社の車内・子供置き去り検知センサーの日本導入普及を目指す
自動車内装材などを扱う中堅商社の三洋貿易は6月3日、オンラインで記者会見を開き、車内の子供置き去り検知センサーの日本導入を始めると発表した。
ルクセンブルクに本社があるIEE社製を扱うもので、バス用は2023年から、乗用車用は2025年から自動車メーカなどへ納入開始する。(佃モビリティ総研・松下 次男)
取り扱う検知センサーはミリ波レーダーセンサーで、乗用車用は「バイタセンス」、バス用は「ライダス」の製品名で展開する。2027年までにバイタセンスを年間30万台、ライダスを年間2000台、車両へ搭載を目指す。
2023年からバス用向け、2025年から乗用車向けを納入開始
近年、自動車内に取り残された子供が熱中症で死亡する事故が継続的に発生することが目立っている。これらは世界どこでも発生しており、原因として意図しない無意識の子供の置き忘れも5割以上に上ることも米国の団体の調査でわかっている。
こうしたことから欧米では事故を未然に防ぐ子供置き去り検知センサー導入の検討が進んでおり、法制化も始まっている。
これに対し、車内の乗員検知センサー大手のIEEは、2020年に乗用車向け子供置き去りセンサーのバイタセンスを世界に先駆けて開発し、市場投入した。バス向けのライダスは2020年から米国でスクールバス向けにすでに採用が始まっている。
IEEジャパンの高橋正輝カントリーマネージャーはミリ波レーダーを使った同社の子供置き去り防止センサーについて「カメラだた何か物にふさがれていると検知できないが、ミリ波レーダーは死角がなく、鮮明に検知できる」のが強みと述べた。また、バス用のライダスは後付けも可能とし、バイタセンスに先行して日本市場への導入を目指す。
国内法規に合致したミリ波レーダーセンサーを使い車内検知で死角なし
日本市場導入に当たり少し時間を要するのは、外部との通信環境が必要となるため。
バイタセンスはそれぞれの地域の使用可能な周波数にあわせ24、79、60GHz(ギガヘルツ)帯へ対応可能な製品を開発しているが、日本市場では60GHz帯を採用。ライダスは24GHz帯で展開する。
製品の販売目標について三洋貿易の平澤光康上級執行役員は「競合社もあり、ライダスは国内の保育園・幼稚園用スクールバス1万8千台の10%強を、乗用車用は年間100万台への搭載を前提に、その3分の1のシェアを目指す」と述べた。
三洋貿易は、旧三井物産の解体に伴い、同社神戸支社の有志により1947年に設立した複合専門商社で、自動車用のシート関連部品が主力の取り扱い製品だ。
新谷正伸社長は今後もモビリティ分野が主要な成長分野と強調し、2005年から国内代理店契約を結ぶIEEの子供置き去り防止センサーは車載センサー事業拡大の有望分野の一つに掲げる。さらに車内の乗員の健康状態などをチャックするバイタルセンサーなどの新規分野への進出も検討する。