三洋化成工業は、乗り心地を向上する自動車シートクッション用原料「サンニックス KC-737」を開発した。
サンニックス KC-737は、三洋化成独自の生産プロセスにより開発したウレタン樹脂用ポリオール(多価アルコール)で、この開発品を用いたウレタンフォームで作られるシートクッションは、乗員に伝わる振動の中でも、人が不快と感じる6Hz付近の振動を低減。乗員の身体をしっかりと支え、長時間の着座後でもたわみにくいため、姿勢を維持でき、疲れにくく快適な走行を実現すると云う。
また、乗り心地を向上した自動車シートクッションは、次世代モビリティの自動車版モバイルワークステーション(乗員が車内で運転以外の他の作業も行えること)での活躍も期待できるとしている。
[開発の背景]
シートクッションにはウレタンフォームが使用されるが、このウレタンフォームはポリオールとイソシアネートを混合し、発泡させながら金型で成形して作られる。
三洋化成は、1960年代にウレタンフォームの原料であるポリオール(ポリプロピレングリコール)を日本で初めて生産。以来、蓄積してきた知見を活用し、今回乗り心地を向上させることができるポリオール「サンニックス KC-737」を開発した。
[技術の概要]
快適な乗り心地を得るためには、乗員に伝わる振動が少ないことが重要で、特に人が不快と感じる周波数である6Hz付近の振動を低減することが効果的だと云う。
この6Hz付近の振動を低減するには、シートクッションと道路や車体の振動が共鳴して増幅する周波数(共振周波数)を6Hzからずらす、あるいは、6Hzの振動伝達率を下げるといった2通りの手段がある。
それに加え、シートクッションは柔らか過ぎても硬すぎても疲労につながるため、座り心地の向上のためには、シートクッションに適度なクッション性を与え、長時間着座後のたわみを抑えることなども必要となる。
これらはいずれもウレタンフォームの高弾性化により実現が可能だが、そのためには、ポリオールをできるだけ高分子量にし、末端の水酸基とウレタン結合によりネットワークを形成させる必要がある。
しかし、従来主流であった製造方法では、副生物が生成することが原因で、高分子量化やネットワークが十分に形成できないという課題があった。
今回三洋化成は、ポリオール製造時の触媒や生産プロセスを見直すことによって、副生物の少ない高分子量ポリオール「サンニックス KC-737」の開発に成功。
三洋化成は、開発品を用いたシートクッションにおいて、従来品を用いたシートクッションと比較して、共振周波数および人が不快と感じる6Hz付近の振動伝達率を低減しつつ、たわみも抑えることを確認。
現在、自動車シートメーカー各社とアプリケーション開発を進め、また自動車メーカー各社に対しても素材を通した快適な乗り心地についての提案を行っている。
[今後の計画]
三洋化成では、将来、完全自動運転の実現により、ドライバーは、運転以外の作業を行う「モバイルワークステーション化」が可能になるとも言われていることから、乗り心地向上に対するニーズは、ますます高まると考え、今後、「サンニックス KC-737」を幅広く展開。
乗り心地向上に対するニーズに応えていくとともに、さまざまなニーズに対応するポリウレタンフォーム用原料の高機能化に注力するとしている。
[問い合わせ先]
三洋化成工業株式会社
メディア・IR部
電話:075-541-4312