ロームは、テクノフロンティア2019(4月17日〜4月19日・幕張メッセ)にブース出展し、高いEMI耐量(以下、ノイズ耐量)により世界初となるノイズ設計不要の車載オペアンプ「BA8290xYxx-Cシリーズ」を展示した。
自動車全体の電子化が進む近年において、ADAS(先進安全運転システム)などの普及に伴い、ますます重要度や需要が増してきているのがセンサだ。
一方で、自動車の電子化や高密度化は、自動車のノイズ環境を悪化させることにつながっており、微小な電波を出すセンサをはじめ、関連デバイスの耐ノイズ対策は大きな課題となっている。
そういった背景の中、ロームが今回ブースに展示したのが、極めてノイズ耐量が高い新開発のオペアンプだ。
オペアンプとは、センサからの微小な信号を増幅し、ADコンバータやマイコンに送信する役割を担うもの。自動車が、センサからの情報により的確な制御や動作を行うためには、非常に重要な電子部品のひとつだといえる。
そのため、オペアンプが周辺の伝送システムや通信機器からのノイズの影響を受けてしまうと、センサの信号をノイズごと増幅してしまい、誤作動の要因となってしまう。
また、自動車開発において、ノイズ評価は工程毎の個別評価が困難なため、組み立て後に評価するのが一般的。だが、部品を組み立てた後に評価がNGとなってしまうと、大きな修正が必要となり、開発工数やコストなどが膨大になってしまう。
そこで、同社ではこうしたオペアンプの課題を解決すべく同製品を開発。
回路やレイアウトを徹底的に見直し、プロセスや素子サイズなどの最適化を図ることで、全周波数帯域の出力電圧変動が一般品の±3.5%~±10%に対し、±1%以下という圧倒的なノイズ耐量を実現。
これにより、センサからの微小な信号をノイズなしで増幅することを可能とし、従来はフィルタを用いて対策していたノイズ設計を世界で初めて不要とすることに成功。加えて、システムの設計工数削減や高信頼化に大きく貢献することができる。
同社ブースでは、従来品と新型のオペアンプを展示し、エンジン模型のプロペラシャフトと連動。それぞれに電波を発するトランシーバーを近づけることで、制御にどのような差がでるかのデモも実施した。
従来品にトランシーバを近づけるとエンジン模型のプロペラは動作を停止するのに対し、新型は影響を受けず回転を継続。同社が開発した新型オペアンプが、いかにノイズに強いかを実証した。
なお、ブースでは、他にもアイドリングストップ搭載車向け昇降圧DC/DCコンバータの応答特性などを向上する「車載昇降圧電源チップセット」も展示。
昇降圧DC/DCコンバータは、近年普及が進むアイドリングストップ車において、エンジンが再スタートする際にバッテリー電圧が降下するクランキングによる誤作動を防ぎ、ECUに安定した電源を供給するための電子機器。
従来、当該コンバータには、応答速度の問題や複雑な制御は必要などといった課題があったが、同社が開発した「Quick Buck Booster®」技術を採用するこの製品は、前述の通り、昇降圧コンバータの応答特性を改善し、出力電圧の変動を±100mAに抑えることに成功。
また、出力コンデンサの容量を1/2に低減するなどで、コストダウンや省スペース化にも貢献。加えて、開発工数の削減や高効率化、低ノイズ化などにも繋がることで、昇降圧DC/DCコンバータの様々な課題や性能向上を実現している。
自動車の電子化に伴う様々な課題に貢献するこれら同社製品について、市場がどう反応していくのか、今後も着目したい。