ロームは4月9日、垂直共振器型面発光レーザーVCSEL素子( Vertical Cavity Surface Emitting Laser / 垂直共振器型面発光レーザーの略称 )を、レーザー光向け樹脂製光拡散材で封止した新しい赤外線光源の技術「VCSELED™(ビクセレッド)」を開発・確立した。なおこの「VCSELED™」はロームの商標・登録商標となっている。
同光源を開発した背景は、自動車の安全性を更に高めるべく先進運転支援システム(ADAS)搭載車に対して、運転手の眠気・居眠りや脇見運転等を検知するドライバーモニタリングシステムが搭載されていることにロームが着目したことに始まる。
日本では、このようなシステムに対して、国土交通省がシステムの設計や機能を定めたガイドラインを作成している他、EUでは2024年7月以降に欧州で販売される全ての新車に搭載の義務化を予定しているため世界規模で注目が高まっている。
また自動車メーカー、サプライヤーでも、運転者以外の同乗者を検出する車室内モニタリングシステムの開発に取り組んでおり、そのような検知システムを、より高精度で機能させるための光源が必要であるとの認識も今や広く認識されている。
そうした中で、高精度で機能する光源として今回、ロームが開発したのがVCSELED™だ。このVCSELED™は温度による波長変動が少なく、かつ広角な発光ビーム角を得られるため、車室内モニタリングシステムに最適なだけでなく、ロボットや産業機器の検査システムや、空間認識・測距システム等の高精度・高性能化にも貢献できる。
新光源VCSELED™技術でシステムの高精度、高性能化が可能
併せて先の通り、自動車のドライバーモニタリングシステム(DMS/Driver Monitoring Systemの略でドライバーモニタリングシステムのこと)や、車室内モニタリングシステム(IMS/In-Cabin Monitoring Systemの略で車室内モニタリングシステムのこと)の性能向上に貢献する光源としても期待できることから、現在、ロームでは製品化に向けた開発を加速化させていた。
ちなみにこのVCSELED™は、高性能なVCSEL素子と光拡散材を組み合わせることでビーム角(照射角度)をLED同様に広げ、VCSELよりも広い範囲で高精度なセンシングが可能な点が大きな強みだ。また小型パッケージ内に発光素子と光拡散材を搭載しているため、アプリケーションの小型・薄型化にも貢献する。
VCSELED™に搭載するVCSEL素子は、狭帯域発光波長を特長としており、LEDと比べて約1/7となる発光波長幅4nmを実現。受光側の認識性能向上が図れる他、LEDで懸念される赤見え(赤外LEDをセンサ等に用いて高出力で使用した場合、可視光線に近い波長の光が発せられて人間の目が感知してしまうことがある)も解消できる。
同時に、波長の温度変化に関しても、LED(0.3nm/℃)の1/4以下となる0.072nm/℃を実現し、温度変化に左右されない高精度なセンシングが可能。更に発光時の応答速度はLEDの約7.5倍速い2nsで、赤外光で距離を計測するToF(Time of Flight)アプリケーションの高性能化にも貢献する。
ロームでは、このVCSELED™を新たな赤外線光源部品の技術ブランドと位置づけ、積極的に製品化を進めている。
その計画では試作サンプルを来たる2024年4月、民生向け量産用サンプルを2024年10月、車載向け量産用サンプルを2025年中に販売開始する予定としている。また、更に車室内モニタリングシステムに対応するレーザー光源の技術開発を突き詰めていくという。