本田技研工業(ホンダ)は6月3日、国土交通省からの〝型式指定申請に於ける不正行為の有無に係る実態調査指示(1月26日)〟を受けて、社内調査を実施した結果、過去に販売した四輪車22車種に於いて不正事案が確認されたことを公表した(5月31日に国土交通省に報告)。
なお、同社では、これら対象車種について、社内で技術検証や実車試験などを行い、規定された法規基準を満たしていることを確認。使用の継続に当たっては、特に対応の必要はないとのこと。
ホンダは、型式指定申請に必要な各種の認証試験は、製品を安全に使用するための大前提となるものであることから、今回の調査結果を重く受け止め、今後、全社をあげて再発防止と信頼の回復に取り組んでいくとしている。
1.主な経緯
・2024年1月26日:国交省より「型式指定申請における不正行為の有無等に係る実態について」の調査指示を受け、速やかに調査を開始。
・4月26日:国交省に、調査を継続中であることおよび、5月中に調査を完了し結果を報告する旨を経過報告。
・5月31日:国交省に調査結果を報告。
2.調査結果の概要
過去に販売した四輪車について、型式指定申請に必要な〝騒音試験〟および〝原動機車載出力試験〟などで、「試験条件の逸脱」や、「試験成績書に実測値と異なるデータを記載する」などの不適切な事案があったことを確認した。なお、現行販売および今後販売を予定している四輪車の認証試験に於ける不適切な事案は確認されていない。
(2-1)騒音試験に於ける不適切事案
【事案】
2009年2月~2017年10月に実施した騒音試験に於いて、以下の2事案があった。
・試験車両の重量設定について、法規の規定範囲を超えた重量で試験を実施した(試験条件の不備)。
・試験成績書に於いて、実際に試験を行なった車両の重量とは異なる規定範囲内の数値を記載した(虚偽記載)。
【背景・理由】
試験実施後に設計変更などに伴い車両重量が変化すると再試験が発生する可能性があるが、車両重量を法規より厳しい条件に設定して試験を行うことで、騒音性能は保証できると解釈し、再試験の工数を増やさずに済むと考えてしまった。
(2-2)原動機車載出力試験(ガソリン機関)、電動機最高出力および定格出力試験に於ける不適切事案
【事案】
2013年5月~2015年6月に実施した原動機車載出力試験、電動機最高出力および定格出力試験に於いて以下の1事案があった。
・試験結果の出力値およびトルク値を書き換えて試験成績書に記載した(虚偽記載)。
【背景・理由】
試験結果が、同一諸元の原動機や電動機を搭載する機種の諸元値に未達または過達の場合、追加の解析が発生する可能性があるが、諸元値に対する差が僅かだった場合には性能のばらつきの範囲内であると考え、既に認証を取得している機種の諸元値に書き換えることで、追加解析の発生を回避し、工数を増やさずに済むと考えてしまった。
(2-3)原動機車載出力試験(ガソリン機関)に於ける不適切事案
【事案】
2013年4月~2015年1月に実施した原動機車載出力試験に於いて以下の1事案があった。
・法規では発電機を作動させた状態で試験を行うべきところ、作動させずに実施し、別の同一原動機試験で得られた補正値を用いて数値を算出し、これを発電機を作動させた状態と同等の試験結果と見做した(試験条件の不備)。
【背景・理由】
発電機を作動させた状態での測定が試験条件であることが、試験マニュアルに規定されておらず、補正値を用いて算出した数値が、定められた条件での試験結果と同等であると見做し、工数を増やさずに済むと考えてしまった。
3.再発防止について
今回の事象を重く受け止め、コンプライアンスおよびガバナンス強化の観点を踏まえた再発防止に全社をあげて取り組んでいく。具体的には、改めて法令順守を徹底する考えを、経営のトップメッセージとして社内に発信し、全ての従業員に対して遵法マインドの育成強化を図っていくほか、人によって異なる解釈や判断が発生しないよう、適切な業務プロセスを構築・標準化すると共に、内部監査機能のさらなる強化を図る。
<対象車両一覧>
(2-1)騒音試験に於ける不適切事案
(2-2)原動機車載出力試験(ガソリン機関)、電動機最高出力および定格出力試験に於ける不適切事案
(2-3)原動機車載出力試験(ガソリン機関)に於ける不適切事案