アルミ熱間鍛造生産ライン専用プログラミングシステムの完成を目指す
産業ロボット向けOS「ForgeOS」の開発を手掛けるREADY Robotics社は1月17日( 米オハイオ州コロンバス発 )、日本のトヨタ自動車並びに米NVIDIA社と協業し、アルミニウム熱間鍛造生産ラインのRPA化( ロボティック プロセス オートメーション )に取り組む。
具体的には、まず3Dワークフローを高速化させる「NVIDIA Omniverse」と、ロボティクスシミュレーション環境の「NVIDIA Isaac Sim」とを連携させ、自社( READY Robotics社 )のForgeOSを介して当該ロボットオートメーションのためのプログラミング環境を組み立てる。
この取り組み事案に於ける最も大きな課題は、熱間鍛造中の金属部品を常に高温に保つ必要があることで、これが保たれないと安全の保全のみならず、製品面の肌あれ( 表面のへこみ )や、バリ残り、バリかえり、打こんなどの製品不良に繫がりかねない。
そこで今回は、生産ラインの稼働に必要なプログラミングプロセスを簡素化でき、ロボットシステム特有の複雑さを軽減可能なREADY Robotics社のForgeOSと、ロボティクス シミュレーションのNVIDIA Isaac Simを組み合わせることで、アルミニウム熱間鍛造生産ライン専用のプログラミングシステムの完成を目指す。
対するトヨタ側では、READY Robotics社とNVIDIA社へ熱間鍛造プロセス全域での微妙なニュアンスを伝えることで、複雑な熱間鍛造ルーチンの動きを最適化させることに協力する。
最終的にはデジタルツインが形成されて工程監視も強化される
ちなみに同工程で一番の鍵となるマニピュレーター( アーム部分 )の動きをForgeOSを介してシームレスに動かして製造プロセスの安定性と効率性を確保。高温部品の加工に係る製造リスクを極力排除して、これまでのロボットシミュレーションでは前例のない高度な自動化プロセスを完成させていくことにある。
なお同システムの完成により、プログラム環境の安定性が実証された暁には以降、物理的な設置段階で新たなプログラミングを行う必要がなくなり、結果、高温部品周囲の安全面への懸念も軽減される。
またForgeOSはプログラムのシミュレーションと共に、物理的な作業工程も100%制御できるようになるため、プログラムの変更がある場合も数秒で更新できるようになることからダウンタイムが最小限に抑えられ、作業工程の保守も容易になるという。
加えて、シミュレーション環境でロボットが学習した内容を現実の環境に適用させる「sim-to-real」ワークフローには、もうひとつ新しい側面がある。
それはリアル環境下で、NVIDIA Isaac Sim シミュレーションを介して一旦汲み上げた実機の学習を減らすことができる部分だ。これにより仮想空間でデジタルツインが形成され、現在の状態の視覚化も可能になり、工程監視が強化される。
生産ラインに必要なシミュレーションとリアルのワークフローが可能に
READY Robotics社の最高イノベーション責任者を務めるケル・ゲリン博士( Kel Guerin )は、「今回、日本の大手ITサービス会社であり、NVIDIA Omniverseパートナーの「SCSK社( 住友商事グループ傘下 )」と協力して、このソリューションをトヨタに提供できることを嬉しく思います。
このNVIDIA Isaac SimをForgeOSに統合すると、特に安全性が懸念される難しいプログラミング タスクに対して適切なプログラムを迅速に作成できるようになります。
NVIDIAは、プログラムが現実世界の状況を反映するのに必要なツールを提供し、ForgeOSは、このシミュレーションから実際のセルへの接続、及びその逆への接続も実現できます」と述べた。
対してトヨタ自動車株式会社原材料開発本部のグループマネージャー鈴木和弘氏は、「ForgeOS独自のアーキテクチャにより、NVIDIA Isaac Simのシミュレーション機能と当社の制御機能が橋渡しされるため、この生産ラインに必要なシミュレーションとリアルのワークフローが可能になります。
これはシミュレーションでプログラムを作成し、そのプログラムを転送し、ForgeOSを使用して実際の本番データをキャプチャし、プロセスを反復的に改善できることを意味します。
この取り組みは産業のデジタル化に係る可能性を切り拓く好例に
つまり当社( トヨタ自動車 )と READY Robotics社、NVIDIA社とのコラボレーションは、より効率的で使い易く、安全性を高めたロボットオートメーションのプログラム開発と、その導入方法について新たなフロンティアを生み出すに足る充分な態勢を整えており、プロセス監視のみならず、稼働したオートメーションシステムから生産データを取得することも可能となります。
私たちは機械学習とAIの組み合わせによって製造プロセスの自動化が可能になる近未来を目指しており、それらは現行のプロセスを改善することから始まり、最終的には工場からシステムの工程データを抽出し、有用なデジタルツイン環境を構築することにまで及びます」と話している。
最後にNVIDIA社で組み込み並びにエッジ コンピューティング担当のバイスプレジデントを務めるディープ・タラ氏( Deepu Talla )は、「実運用に先立ち生産プロセスを忠実にシミュレーションすることで、運用コストを削減しながら、生産性と安全性を大幅に向上させることができます。
トヨタ自動車並びにREADY Robotics社とのコラボレーションは、NVIDIA Isaac Simなどの最新テクノロジーを他社に先駆けて利用することで、産業のデジタル化に係る可能性を切り拓く好例になります」と3社による取り組みの先進性を語った。