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2024年10月14日【イベント】

プロロジウム、シリコン複合アノード電池をパリで初披露

坂上 賢治

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LLCB( 大型リチウムセラミック電池 )技術に取り組む台湾のプロロジウム・テクノロジー( プロロジウム社 / ProLogium Technology )は10月14日、パリモーターショー2024の壇上で遂に新世代の100%シリコン複合アノードバッテリーを初披露した。

 

そんな同バッテリー技術は、ドイツの認証企業テュフ ラインランド( TÜV Rheinland )で認められたたけでなく、独FEVグループとの次世代バッテリーパックの開発・製造プロジェクトに採用されるなど、近未来のLLCB商品化の青写真を示すものとなった。

 

 

プロロジウムの創設者で会長を務めるヴィンセント・ヤン氏は、「当社の次世代バッテリー技術は、EVに求められる複合的な課題を全て解消させます。当社はEV産業界の真のゲームチェンジャーとなるのです。

 

新たなLLCBは、エネルギー密度と充電効率の点で従来のリチウムイオンバッテリーの性能を凌駕するだけなく、充電ステーションが不足している現状自体を克服し、中古車の残存価値も向上させることができます。我々のLLCBは、現段階で八方塞がりのEV社会を打ち破ります。

 

今回、披露した当社の100%シリコン複合アノードは、体積エネルギー密度749Wh/L、重量エネルギー密度 321Wh/kgを達成。今後もその進化は続き、来たる2024年末までに体積エネルギー密度は823Wh/L、重量エネルギー密度は355Wh/kgに拡大できる見込みです」と語り、今後もその進歩が引き続き成長し続けていくことを示唆した。

 

 

次いでプロロジウムで主任科学者を務めるドミトリー・ベロフ博士は、「当社は既存技術の壁を打ち破りました。その取り組みは2023年以降、エネルギー密度と急速充電性能の両方で競合他社を上回り続けており、その差はむしろ益々広がっています。

 

例えば、現段階で主流のLFPB( 200Wh/kgのリン酸鉄リチウムイオン電池 )やNCMB( 200~300Wh/kgの三元系リチウムイオン電池 )と比較すると、我々のLLCBは既に現行のリチウムイオンバッテリーの水準を遙かに凌駕しており、その差は今年末までに最大77%まで広がる見込みです。

 

独テュフ ラインランドのテストデータによると、我々のLLCBは僅か5分間の充電で5%から60%まで充填され、8.5分間の充電で80%に達します。これは競争の激しい今日のEV市場でも比類のない成果です。当社のLLCBは、並外れたエネルギー密度と急速充電機能を備えたことで「小さなバッテリーで大きな未来を切り拓く」という予てよりの当社のコンセプトを体現したものになりました。

 

つまり5分間の充電で約300キロメートルの走行が可能となるのです。この超高速充電性能により、充電時の待ち時間が83.3%も短縮でき、充電ステーションの不足や長い待ち時間といった差し迫った課題が一気に解決することになります。従って我々のLLCBは、現行EVの総エネルギー容量の66% ( 83kWhから55 kWh程度 )で充分な実用性を保てるため、車両重量自体が300kg削減でき、それは炭素税の引き下げと車両の初期コストの削減にも繫がります。

 

更にバッテリーをパック単位ではなく、セル単位毎にモジュール設計できることで修理や補修が容易になり、セル単体のリサイクルが低コストになり、結果、中古EVの再販価値も高まることになるのです」と飛躍的な性能向上を果たしたLLCBの価値を詳しく説明した。

 

 

加えて独FEVグループで電動パワートレイン担当のグローバル副社長を務めるトーマス・ヒュルホルスト博士は、「最後にもうひとつ重要なハイライトがあります。それは今回のパリモーターショー224で、プロロジウムと独FEVグループとの戦略的パートナーシップを発表したことです。

 

両社のコラボレーションは、〝行政府の規制基準〟と〝市場が望む要求性能〟を満たすだけの旧態依然の技術レベルを大きく飛び越え、LLCBセルのエネルギー密度が321Wh/kgに到達しました。

 

それは個々EVの目標走行距離の合わせて、フレキシブルな車両設計と製造を可能にします。これからは、プロロジウムの先見性とFEVグループのエンジニアリング技術を組み合わせることで、持続可能なEVの新たな未来が切り拓かれることになるのです」と結んだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。