パイオニアは9月30日、市販製品で初の緊急通報機能付き通信ドライブレコーダーを発売すると発表した。あおり運転に遭遇した場合などに警察への通報やロードサービスを受けられる機能を持たせた商品だ。11月中旬からサブスクリプション方式でサービスを提供する。(佃モビリティ総研・松下次男)
自動通報や救援活動などを展開する「ドライブレコーダー+(プラス)」
発売する製品名は「ドライブレコーダー+(プラス)」。日本自動車連盟(JAF)、日本緊急通報サービスとパートナーを組み、オペレーションサービスや自動通報、救援活動などを展開する。
モビリティサービスカンパニーCEOの相本孝仁氏
製品発表に合わせてオンラインで記者会見した社内カンパニーであるモビリティサービスカンパニーCEOの相本孝仁氏はここ数年ドライバーの不安を最も煽り立てているのが「あおり運転」とし、それによる摘発件数は死亡事故の5倍にのぼると強調した。また、同社の社内調査によると、ドライブレコーダーに期待する声が最も多かったのが「後方自動録画」と並んで「あおられ時に警察に通報する機能を求めている」ことだった。
こうした背景から、通信機能を持たせたドライブレコーダーを開発、発売することにしたもの。製品には、これまでの通信サービスを通して蓄積してきた技術やノウハウを集積した先進安全運転支援システム「Intelligent Pilot(インテリジェント パイロット)」も搭載し、さらに先の安心・安全を提供するとした。
相本氏は「ドライブレコーダーは(トラブルの際に)映像による証拠保全のために一般に普及したものだが、現在ではそれ以上の役割が求められている」と強調。今度の「つながるドライブレコーダーでこうした不安を解消したい」と述べた。
純正品には通信機能を備えたデバイスがあるが、市販品では未設定だった。こうした中で、すでに日常的に走行中の保有車両のファミリー層などをコアに販売を拡大し、数年後に数万台の普及を目指したいとした。
AIによるインテリジェント機能がドライバーの事故リスクを事前に予測して危険を知らせる
投入するドライブレコーダー+は、日本緊急通報サービスの「HELPNET」を利用した警察・消防への迅速な通報、JAFのロードサービスに連携する緊急通報機能などに対応。さらに登録した家族のLINEやメールアドレスにも緊急事態を通知する。
モビリティサービスカンパニー マーケティング担当、山浦啓太郎氏
具体的なサービス内容として3つの機能を持たせている。一つが専門のオペレーターからトラブル対応のプロにつながる緊急通報機能。事故時や車両トラブルの際に、ドライブレコーダーから手動でHELPNETのオペレーションサービスに通報、オペレーターが状況に応じて警察・消防・JAFロードサービスへ接続する。
さらに緊急通報と同時に位置情報や車両情報などをオペレーターに自動送信し、見知らぬ土地や気が動転して説明が困難な場合にも情報伝達が可能だ。また、強い衝撃を検知した場合には自動で緊急通報を行い、オペレーターの問いかけに応答がない場合は救援を要請する。
二つ目が家族に「つながる」見守り機能だ。緊急通報と同時に、登録されたLINEやメールアドレスに自動で通知し、家族の緊急事態をリアルタイムに把握できる。通知はトラブル発生時のみ。
そしてもう一つの機能がインテリジェント パイロットを搭載し、AI(人工知能)がドライバーの事故リスクを事前に予測して危険を知らせる。日常的に使用する道路でも、その状況に応じた本当に危険な時だけ警告を行い、ドライバーの警告慣れを防ぐ。AIがヒヤリハットなどに対応し、交通事故を未然に防ぐ。
通信費など月額の負担が含まれるサブスク浸透が、ドライブレコーダーにも波及
ドライブレコーダー+は前方録画の1カメラタイプと前方・後方録画もしくは前方・車室内録画の2カメラタイプがある。発売はサブスクリプションでサービスを提供する。利用料は1カメラタイプが月額1980円、2カメラタイプが同2480円。2020年11月中旬からパイオニアのウェブサイト内のオンラインストアで発売する。ドライブレコーダーをサブスクで販売するのも市販市場で初めて。
なお、これに先立って9月30日から10月30日までクラウドファンディングサイト「Makuake」で年間2万1800円(1カメラのみ)の特別価格で先行、限定販売する。
今回ドライブレコーダー+をサブスクで扱うことにしたのは、通信費など月額の負担が含まれることやサブスクが一般に普及してきたことなどを掲げた。
製品発売に先立ち交通安全祈願にも赴いた。また製品売上の一部を社会貢献にも役立てるという
ドライブレコーダーのブランドをカロッツェリアにしなかったのは、「モビリティサービスカンパニー初の商品であり、売り方も変わるため」とした。パイオニアは「安全で快適なクルマ社会の実現」に向けた社会貢献活動の一環として売り上げの一部を交通安全活動を行う団体に寄付する予定だ。