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2021年5月10日【イベント】

パナソニック、2020年度連結決算は2ケタの減収減益

山田清志

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パナソニックは5月10日、2020年度(20年4~21年3月)の連結決算を発表した。それによると、売上高が前期比10.6%減の6兆6987億円、営業利益が同12.0減の2586億円、当期純利益が同26.9%減の1650億円と、2ケタの減収減益だった。当期純利益が1兆1717億円と、初の1兆円超えを果たしたソニーとはずいぶんと差がついてしまった。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

コロナ影響で1350億円の減益要因

 

「2020年度実績は、第3四半期決算発表での修正公表値を上回る着地となった。売上高は、事業ポートフォリオ改革による非連結化影響に加え、コロナ影響により減収となったが、調整後営業利益は経営体質強化の取り組みが着実に進捗し、社会変化を捉えた事業の増販も寄与して増益となった。営業利益と純利益は前年度のその他損益における一時益の反動等もあり減益だった」

 

取締役専務執行役員の梅田博和CFOは2020年度決算をこう総括し、「四半期別では、第1四半期は減収減益だったが、第2四半期に増益に転じ、下期は増収増益を実現した」と付け加えた。

 

パナソニック梅田博和CFO

 

具体的には、第1四半期はオートモーティブ、コネクティッドソリューションズを中心に大幅な減収減益に陥り、第2四半期はオートモーティブとアプライアンスなどの販売が回復に転じたことで、全社では増益に転じた。下期はアプライアンス、インダストリアルソリューションズ、オートモーティブが前年を上回る水準で推移して、全社でも増収増益を達成した。

 

2020年度はやはり新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きく、売上高で5600億円、営業利益で1350億円のマイナス要因となった。そのほか、原材料価格の高騰や半導体の供給不足なども影響したという。「例えば、銅価格は1トンあたり1万ドルと、これまで例がないほどの高騰ぶりになっている」(梅田CFO)とのことだ。

 

懸案のテレビ事業が3年ぶりに黒字

 

セグメント別の業績については、アプライアンスが売上高2兆4944億円(前期比4%減)、営業利益1043億円(同87%増)だった。売上高はホームアライアンスが堅調に推移したが、販売を絞り込んだスマートライフネットワークの減販影響が大きくなり減収。営業利益はホームアライアンスの増販益に加え、各事業でのコストコントロールが奏功して増益となった。

 

2020年度業績

 

特に、懸案事項だったテレビ事業が第3四半期と第4四半期で黒字化を達成。四半期ベースでテレビ事業が黒字になったのは、2017年度以来、3年ぶりのことだ。「2020年度は前年比で約2割の機種数を削減した。テレビの生産については、メキシコ工場の閉鎖に続いて、宇都宮、インド、ベトナムでも終了、これらの工場は他の製品の生産や試作に振り向けることになる。今後、テレビの生産はマレーシア、チェコ、台湾、ブラジルに集約することになる」と梅田CFO。

 

ライフソリューションズは、売上高が1兆5073億円(前期比21%減)、営業利益が692億円(同62%減)だった。空質関連事業が好調に推移し、固定費削減を徹底したが、市況悪化や住宅関連事業の非連結化影響もあって、大きく減収減益となった。

 

コネクティッドソリューションズは、売上高が8182億円(前期比21%減)、営業損益が200億円の赤字(前期は922億円の黒字)だった。中国でのサーバー向けなど5G関連需要で実装機が好調だったが、航空便数の激減や航空機の大幅減産の影響と受けたアビオニクス事業の落ち込みをカバーできず、大幅な減収となり赤字に転落した。「だが、調整後営業利益は36億円の黒字を確保した」(梅田CFO)という。

 

2020年度セグメント別実績

 

テスラ向け車載電池事業が黒字定着へ

 

オートモーティブは、売上高が1兆1194億円(前期比10%減)、営業利益が109億円(前期は466億円の赤字)と黒字に転換。「2020年度は当初公表値をマイナスで出していたが、プラスで着地することができた。これは車載機器の良化とともに、テスラ事業が黒字で着地したからだ」と梅田CFOは説明する。

 

第1四半期はコロナ影響による自動車減産の影響があり、大幅な赤字に陥ったものの、第2四半期からは自動車の販売が回復して黒字に転換し、第3四半期以降は前年を上回る水準で推移して通期の黒字を果たした。

 

「21年度(21年4~22年3月)については、500億円の利益見通しで、車載機器、車載電池ともに増収増益の見通しだ。テスラを含めた円筒形電池については、黒字が定着してきている」と梅田CFO。その500億円のうち、車載機器が6割強、テスラ向けなどの車載電池が4割弱になると見ている。

 

2021年度通期見通し

 

インダストリアルソリューションズは、売上高が1兆2555億円(前期比2%減)、営業利益が前期から616億円増加して662億円となった。売上高はデータセンターやFA向けが好調に推移し、下期からは車載向けも回復したが、半導体事業譲渡等の影響により減収。営業利益はコンデンサーや蓄電システム、産業用モーターなどの増販益に加え、半導体の構造改革効果等により、大幅な増益を達成した。

 

21年度は全セグメントで増収増益に

 

2021年度の連結業績見通しは、売上高が7兆円(前期比4.5%増)、営業利益が3300億円(同27.6%増)、当期純利益が2100億円(同27.2%増)を見込んでいる。

 

「各国経済の回復や、経営体質強化の取り組み継続により、増収増益を見込んでおり、全てのセグメントで増益になる見通しだ。また、中期戦略の最終年度として、低収益体質からの脱却に向けた取り組みを着実に進めつつ、キャピタルアロケーション方針の基づき、中長期的な事業機会への取り組みを強化していく」と梅田CFOは強調した。

 

セグメント別の業績見通しについては、次の通りだ。アプライアンスは売上高が前期比1%減の2兆4800億円、調整後営業利益が114億円増の1230億円、営業利益が7億円増の1050億円。空調などは伸長するが、食品流通などの需要回復が鈍く、売上高は前年並みに想定。利益は原材料高騰影響があるものの、空調などの増販益や経営体質強化により増益を見込む。

 

2021年度セグメント別実績

 

ライフソリューションズは、売上高が前期比1%増の1兆5300億円、調整後営業利益が56億円増の900億円、営業利益が58億円増の750億円。海外の配線器具や空質関連事業、ハウジング事業の伸長により増収、増販益と合理化によって増益を予想する。

 

コネクティッドソリューションズは、売上高が前期比9%増の8900億円、調整後営業利益が263億円増の300億円、営業利益が380億円増の180億円。アビオニクスでの需要減の影響は残るが、前年から需要は回復基調にあることと、国内でビジネスを行っているパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)などが伸長することで、増収増益を見込む。

 

オートモーティブは、売上高が前期比16%増の1兆5600億円、調整後営業利益が478億円増の500億円、営業利益が171億円増の280億円。自動車市場の回復や、円筒形車載電池の北米と国内での高容量新製品への切り替えが完了し、増産体制へ移行すること、また北米での新たな生産ラインを稼働することで増収増益を目指す。

 

インダストリアルソリューションズは、売上高が前年比4%増の1兆3000億円、調整後営業利益が159億円増の900億円、営業利益が188億円増の850億円。車載向け部品や多層基板材料などの増販で半導体事業譲渡による減販をカバーするとともに、固定費削減施策によって増収増益を見込む。

 

津賀社長、9年間の社長時代を振り返る

 

この日の決算会見には、3月末でCEOを退任した津賀一宏社長も同席した。津賀社長は6月末に社長を退任して会長に就任することになっている。9年間の社長時代を振り返って、次のように述べた。

 

パナソニック津賀一宏社長

 

「何をやらなくてはいけないか、ということが最初から分かっていたわけではなく、みんなで走りながら対応してきた。パナソニックは、日本を中心とした家電事業が中核であり、さらにその中心にはテレビがあった。これを、くらし密着を強化しながら、白物家電へと軸足を移し、地に足をつけたグローバル経営を目指した。手探りで取り組んできた9年間であり、それをやってきた結果がいまである。『できた』というのが私の印象である。だが、次のCEOには、『できなかったことが山積みである』というスタンスでスタートしてもらい、改善に次ぐ改善をしてほしい」

 

いずれにしても、津賀社長時代にライバルだったソニーに大きく差をつけられてしまったのは間違いない。次に時代を担う楠見雄規CEOがどのような巻き返し戦略を打ち出すか注目される。その楠見CEOは「他社が追いつけない要素を1つか2つ持つ必要があり、その観点から競争力を徹底的に強化していきたい」と強調しており、5月27日に行う新CEO説明会で具体的な戦略が明らかにされそうだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。