パナソニックは、11月28日の取締役会で、完全子会社のパナソニック出資管理(以下、PEMJ)の完全子会社「パナソニック セミコンダクターソリューションズ(以下、PSCS)」を中心に運営する半導体事業を、台湾の半導体企業、Winbond Electronics 傘下の「Nuvoton Technology(以下、Nuvoton)」に譲渡すること、ならびに同社と株式資産譲渡契約を締結することを決議した。
1.背景および目的
パナソニックの半導体事業は、過去数年来、AV分野から車載・産業分野にシフトするともに、イメージセンサなどの「空間認識」技術と、バッテリーマネジメント用ICやリチウムイオン電池保護回路用MOSFETなどの「電池応用」技術を注力分野と位置付け、これらの分野にリソースを集中することで事業成長を目指してきた。
一方、2014年4月に北陸工場(魚津・砺波・新井)の半導体ウェハ製造工程を、イスラエルの半導体ファウンドリ企業「タワーセミコンダクター社」との合弁会社に移管。
さらに同年6月にはシンガポール、インドネシアおよびマレーシアに保有していた半導体組立工場を、香港に本社を置く「UTACマニュファクチュアリングサービシーズ社(以下、UTAC社)」へ譲渡。
その後も国内外拠点の統廃合を行い、アセットライト化による事業リスクの低減を図り、競争力の強化に取り組んできた。
しかし、近年の競合他社の勢力拡大、注力事業への巨額投資、M&Aを通じた業界再編の進行等、競争が激化する半導体事業において、半導体事業を成長拡大させるためには、今後も事業運営の強化と継続した投資が必要になることから、今回、パナソニックの技術力、商品力を高く評価・活用し、持続的な事業成長が期待できるNuvotonの下での事業運営が最善と判断し、譲渡を決定した。
2.譲渡について
(1)譲渡前事業再編:パナソニックは譲渡の直前に次の通り半導体事業の再編を行う。
① PEMJの完全子会社であるパナソニック デバイスシステムテクノ(以下、PIDST)、パナソニック デバイスエンジニアリング(以下、PIDE)の全株式を、会社分割によりPSCSに承継させる。
② パナソニックおよび子会社が保有する半導体事業関連の知的財産権および契約の一部、 ならびに保有する半導体事業関連資産・負債の一部を、会社分割または資産譲渡によりPSCSに承継させる。
③ PEMJが保有するPSCSの全株式を、新たに設立するPEMJの完全子会社(以下、PSCS持株会社)に株式譲渡により承継させる。
④ PSCSの半導体関連部品(リードフレーム)事業を会社分割により新たに設立するPEMJの完全子会社に承継させる。
(2)譲渡の内容:上記「譲渡前事業再編」を前提に、来年6月1日を効力発生日(予定)として、次の通り譲渡を実施する。
① PEMJは、譲渡前事業再編後のPSCS持株会社の全株式をNuvotonに譲渡する。
② パナソニックが子会社を通じて保有しているシンガポール法人パナソニック アジアパシフィック(以下、PA)において、半導体の開発・販売事業を担当する社内カンパニーであるパナソニック デバイスセミコンダクターアジア(以下、PIDSCA)の事業を、Nuvotonのシンガポール法人に譲渡する。
③ パナソニック セミコンダクター蘇州(以下、PSCSZ)の半導体事業に係る設備・在庫等をNuvotonの中国法人に譲渡する。
3.その他
契約は、各国・地域の競争法当局その他政府機関の承認取得を前提としている。また、譲渡前事業再編を含む譲渡の実行予定日は、当該承認取得およびその他の許認可等に関する手続きにかかる期間を踏まえ大きく異なる可能性がある。
■譲渡による資本関係の変化
※PCN:パナソニック チャイナ/PHN:パナソニック ホールディングオランダ/TPSCo:パナソニック・タワージャズ セミコンダクター
[パナソニック半導体事業の沿革]
・1957年:松下電子工業(フィリップス社との合弁会社)高槻工場において半導体生産開始。
・1968年:長岡工場(京都府長岡京市、現 PSCS本社所在地)稼働。シリコントランジスタ/バイポーラIC量産開始。
・1970年:MOS LSI量産開始。
・1993年:フィリップス社との合弁を解消し、松下電器産業(現パナソニック)の100%子会社に。
・2001年:松下電器産業が松下電子工業を吸収合併。
・2014年:タワーセミコンダクター社と拡散工程の合弁会社設立。UTAC社へマレーシア、シンガポール、インドネシアの組立工場を譲渡。
・2015年:ソシオネクスト社へシステムLSI事業を移管。
・2019年:ディスクリート半導体事業をローム社へ譲渡(予定)
[会社概要]
<パナソニック セミコンダクターソリューションズ>
– 名称:パナソニック セミコンダクターソリューションズ株式会社
– 所在地:京都府長岡京市神足焼町1番地
– 代表者:代表取締役社長 小山 一弘
– 事業内容:半導体および関連部品の開発、製造、販売
– 設立:2014年3月10日
– 資本金・出資:4億円 パナソニック出資管理合同会社100%
<パナソニック デバイスシステムテクノ>
– 名称:パナソニック デバイスシステムテクノ株式会社
– 所在地:京都府長岡京市神足焼町1番地
– 代表者:代表取締役 中澤 省吾
– 事業内容:半導体関連の設計、開発
– 設立:1997年1月10日
– 資本金・出資:2億円 パナソニック出資管理合同会社100%
<パナソニック デバイスエンジニアリング>
– 名称:パナソニック デバイスエンジニアリング株式会社
– 所在地:富山県魚津市東山800番地
– 代表者:取締役社長 梶原 大平
– 事業内容:半導体関連の技術業務請負
– 設立:2000年3月1日
– 資本金・出資:2億円 パナソニック出資管理合同会社100%
<パナソニック デバイスセミコンダクターアジア>
– 名称:パナソニック デバイスセミコンダクターアジア
(英:Panasonic Industrial Devices Semiconductor Asia)
– 所在地:シンガポール
– 代表者:社長 下茂 智博
– 事業内容:半導体の開発、販売
– 設立:1978年12月1日
– 備考:パナソニック アジアパシフィック株式会社の社内カンパニー
<パナソニック セミコンダクター蘇州>
– 名称:パナソニック セミコンダクター蘇州有限会社
(中:蘇州松下半導体有限公司)
– 所在地:中国 江蘇省 蘇州市高新区鹿山路666号
– 代表者:董事長 小山 一弘
– 事業内容:半導体の製造、販売 車載カメラの製造
– 設立:2001年12月29日
– 資本金・出資:95億円 パナソニック チャイナ有限会社100%
<Winbond>
– 名称:Winbond Electronics Corporation(華邦電子股份有限公司)
– 所在地:台中市42881大雅區中部科學園區科雅一路8號
– 代表者:董事長 アーサー・チャオ(焦佑鈞)
– 事業内容:スペシャルティDRAM、コードストレージ用フラッシュメモリICの製 品設計、研究開発、ウェハ製造
– 設立:1987年9月29日
– 資本金・出資:398億台湾ドル Walsin Lihwa Corporation 22.01%, Chin Xin Investment 5.0%
<Nuvoton>
– 名称:Nuvoton Technology Corporation(新唐科技股份有限公司)
– 所在地:新竹市東区新竹科学工業園区研新三路4号
– 代表者:社長 ショーン・タイ(戴尚義)
– 事業内容:ロジック集積回路(「IC」)の研究、設計、開発、製造、販売及び6イ ンチウェハの製造、試験、OEM
– 設立:2008年4月9日
– 資本金・出資:73億5,800万台湾ドル Winbond Electronics Corporation 61.55%