片山栄一常務執行役員
パナソニックは9月29日、スポーツ関連の戦略説明会をオンラインで開催し、スポーツ事業を統括する本社直轄の新組織を立ち上げると発表した。名称は「スポーツマネジメント推進室」で、10月1日付で設立し、片山栄一常務執行役員が責任者を務める。(経済ジャーナリスト・山田清志)
パナソニック スポーツ
コンテンツ・サービス型の事業も展開
パナソニックはプロサッカーチームのガンバ大阪をはじめ、バレーボールやラグビー、野球など、さまざまなスポーツチームの運営に関わり、日本企業でもトップクラスの資金をスポーツ事業に投入している。その結果、企業のブランドイメージは向上しているものの、事業的には決して成功しているとは言えなかった。収支も赤字と見られている。
しかし、世界のスポーツ産業は成長を続け、そのコンテンツの市場規模は95兆円で、映画(43兆円)、音楽(21兆円)、ゲーム(16兆円)の合計を上回る。日本だけで見ても、10兆円を超える規模になっている。しかも、その規模は年々拡大しているのだ。パナソニックとしても、その波に乗りたいのは当然だろう。
「これまでパナソニックは、ガンバ大阪と連携したデジタルマーケティングによる集客力の向上などで成果を上げてきたが、バレーボールやラグビーなどの企業スポーツに対しては運営型事業を十分に展開できていなかった。今回の新組織発足により、新リーグ発足を控えているバレーボールとラグビーの運営型事業を強化するとともに、それに付随するコンテンツ・サービス型の事業も展開することにした」と片山常務執行役員は説明する。
日本のスポーツ産業
持っているアセットを最大限活用
例えば、バレーボールでは10月のシーズン開幕に向けて新たにファンクラブを設立し、コアファンとの接点を強化するとともに、ウェブサイトでの興行チケット販売やグッズ販売も強化していく。またラグビーでは、同様の取り組みに加えて、2021年8月に際頭県熊谷市に新たな拠点を設置して活動を強化していく。そのほか、自社で培った興業やデジタルマーケティングのノウハウを他チームや業界にも横展開していくことで、スポーツ業界の発展にも貢献していく。
これにあわせて、これまでコーポレートとカンパニーで個別に発信を行っていたスポーツチームのホームページを見直し、パナソニックスポーツ総合サイトを新たに開設する。スポーツを越えた選手のコラボレーションによる情報発信など、ファンがより楽しめるようにコンテンツを変えていく。バレーボールのファンでもラグビーに興味が湧くようにしていくわけだ。
パナソニック スポーツ関連事業
「スポーツは暮らしを豊かにする世界のソーシャルエンターテインメントだと思う」と片山栄一常務執行役員は強調し、今後はパナソニックが持っているアセットを最大限活かしてスポーツ事業を強化していく方針だ。2029年度にはスポーツ事業の売上高を現在の50億円から3倍の150億円にするという。
企業スポーツは現在、新型コロナウイルスの影響によって、大きな曲がり角に来ている。それだけにパナソニックの挑戦はスポーツに力を入れている企業にとって要注目だ。