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2022年10月31日【企業・経営】

パナソニックHD、原材料高騰などで大幅な減益

山田清志

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パナソニックホールディングス(HD)が10月31日に発表した2022年度第2四半期累計(4月~9月期)は、売上高が前年同期比15.0%増の4兆639億円、調整後営業利益が同27.0%減の1459億円、営業利益が同25.6%減の1497億円、純利益が同29.9%減の1073億円だった。7月~9月期についても、それぞれ2兆900億円(前年同期比20.0%増)、802億円(同0%)、861億円(同23.7%減)、584億円(同23.7%減)と増収減益だった。その実績を踏まえ、2022年度通期業績見通しを修正し、当期純利益が1.6%の増益から一転、8.0%の減益となる。(経済ジャーナリスト 山田清志)

 

2022年度2Q累計業績

 

オートモーティブとコネクトは赤字に

 

「第2四半期(7月~9月期)の実績は、売上高がくらし事業、オートモーティブ、エナジーの販売増に加え、ブルーヨンダーの連結化や為替換算により増収となった。調整後営業利益は増販益があったが、くらし事業やエナジーにおける成長に向けた固定費の増加などにより、前年並みとなった。営業利益と純利益については、前年にブルーヨンダーの買収に伴う既存持分の再評価益583億円を計上した反動で減益となった」と副社長執行役員の梅田博和グループCFOは決算のポイントについて説明した。

 

セグメント別の業績はこんな感じだ。くらし事業は4月~9月期の売上高が前年同期比12%増の1兆7135億円、調整後営業利益が81億円減の683億円で、7月~9月期がそれぞれ18%増の8770億円、28億円増の326億円だった。

 

2022年度2Qセグメント別実績

 

「成長事業である空質空調設備の欧州事業や海外電材に加え、北米のショーケースが堅調に推移、上海ロックダウンの解除による国内家電の回復などもあり増収となった」と梅田CFO。調整後営業利益についても、原材料・物流費の高騰があったものの、従来から取り組んできた国内外の価格改定や合理化などでほぼカバーし、成長事業を中心とした増販益で増益を達成した。

 

オートモーティブは4月~9月期の売上高が前年同期比19%増の5926億円、調整後営業利益が95億円減の120億円の赤字で、7月~9月期の売上高が36%増の3230億円、調整後営業利益が47億円増の1億円だった。第1四半期は上海ロックダウンの影響があったが、第2四半期は自動車生産の回復を受けて増収となったほか、部材高騰分の価格改定やコストダウンなどが増益要因となった。

 

「第1四半期は3桁の赤字だったが、第2四半期は挽回してわずかな黒字になった」と梅田CFOは一定の評価を示した。

 

コネクトは4月~9月期の売上高が前年同期比22%増の5179億円、調整後営業利益が220億円減で96億円の赤字に転落、7月~9月期の売上高が26%増の2731億円、調整後営業利益が56億円減の3億円の赤字だった。

 

2022年度セグメント別業績

 

「第2四半期はパソコンやスマートフォン分野での投資減速の影響を受けたプロセスオートメーションや、オリンピック以降に需要が低迷した現場ソリューションが販売減となったが、海外向けの堅牢モバイル端末や航空市場の回復によるアビオニクスの増販に加えて、ブルーヨンダーの連結化もあって増収となった。その一方、ブルーヨンダー買収に伴う無形資産償却費などにより減益になった」と梅田CFOは説明する。

 

円安効果を除けば通期見通しは減収減益

 

インダストリーは4月~9月期の売上高が前年同期比7%増の5960億円、調整後営業利益が34億円減の437億円で、7月~9月期はそれぞれ10%増の2995億円、27億円減の194億円だった。ただ、為替影響を除くと、減収だったそうだ。また、減販損や原材料高騰を価格改定、合理化、円安効果でカバーできずに減益となった。

 

エナジーは4月~9月期の売上高が前年同期比24%増の4698億円、調整後営業利益が83億円減の304億円で、7月~9月期はそれぞれ28%増の2420億円、52億円減の139億円。「パソコンやゲーム機などの民生向けリチウムイオン電池が市況悪化の影響により低調だったが、価格改定に加え、北米車載電池の生産性向上や2021年度の新ライン増設による増産効果もあり増収となった。ただ、円安による増益効果があったが、原材料や物流費の高騰、増産に伴う固定費や開発費の増加により減益になってしまった」と梅田CFOは話す。

 

質疑応答では、パナソニック エナジーが米カンザス州で車載用円筒形リチウムイオン電池の新工場建設についての質問が相次いだ。というのも、10月31日に新工場建設を正式決定したと発表したからだ。2024年度中の生産開始を目指し、この11月から工場建設を開始する。初期生産能力は年間約30GWhで、2170セル電池を生産する。

 

2022年度業績見通しの修正

 

「2170セル電池から作り出すのは顧客側からの強い要望があったためだ。一刻も早くしてほしいということで、確実にスピード感を持って立ち上げることができる2170セル電池から生産を開始する。4680セル電池について作る可能性もあるが、現在、和歌山工場で当初の計画通りに量産化に向けた検証を続けている」と梅田CFOは説明する。

 

2022年度通期業績見通しについては、5月の公表値を修正。売上高が3000億円増の8兆2000億円(前年度比11.0%増)、調整後営業利益が400億円減の3400億円(同6.2%減)、営業利益が400億円減の3200億円(同10.5%減)、当期純利益が250億円減の2350億円(同8.0%減)と、売上高を上方修正、利益を下方修正した。

 

「売上高は為替換算により上方修正したが、為替影響を除くと2000億円の下方修正となる。利益ではくらし事業が変更なし、エナジーが上方修正、オートモーティブ、コネクト、インダストリーが下方修正で、全体でも下方修正する」と梅田CFO。リカーリングビジネスの柱に位置づけている米ソフトウェア企業のブルーヨンダーも、景気減速を受けて顧客企業が新規投資を見送る動きが出てきて、受注が伸び悩んでいるという。実質減収減益のパナソニックHDは構造改革をさらに進め、事業の効率化を加速する必要がありそうだ。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。