パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(パナソニック)は、「オートモティブワールド2019」(1月16日〜1月18日・東京ビッグサイト)内の「国際カーエレクトロニクス技術展」に、ミリ波レーダ用アンテナ等が出す信号の高利得化と基板の加工コスト低減に貢献する新素材「R-5515」を展示した。
同社が開発中の「R-5515」は、ハロゲンフリー超低伝送損失基板材料と呼ばれるもので、特にミリ波レーダー等の高周波信号を出すアンテナに最適な素材だ。
ミリ波レーダは、ADAS(先進運転支援システム)搭載車両や自動運転車が、路上にある障害物等を検知するために用いるもので、より遠方の情報を入手するには高周波の劣化度合いが低い低伝送損失のアンテナが要求される。
現在、ミリ波の送受信を行うアンテナ用基板には、主にフッ素樹脂基板材料が用いられているが、R-5515を材料としたアンテナは、ミリ波レーダに使用される79ギガヘルツなどの高周波において、従来品に比べさらなる低伝送損失を実現する。
それを裏付けるのが同社の実験結果だ。
同一の電波を出すミリ波レーダ用アンテナでも、R-5515を使用したものはフッ素樹脂基板材料を用いたものに比べ、検知距離が約10m、6%向上している(アンテナ構成及び適用レーダにより検知距離の改善量は変わる)。
また、フッ素樹脂基板材料は、樹脂の性質上、基板製造時の加工が難しく高価であるという課題もあったが、R-5515は加工性もいいため、製造コストが低減されるというメリットもある。
加えて、同社では、現在、このR-5515をはじめとするミリ波レーダ用アンテナ向け基板材料に関連する様々なソリューションを展開中だ。
まず、材料設計分野では、同社が持つ樹脂設計技術を駆使し、ミリ波レーダ用アンテナやモジュール等の様々な電子回路基板材料、チップ封止、アンダーフィル等の半導体実装用材料及び光学、磁性等の機能フィルムを開発。
また、測定評価の分野では、最先端の設備・評価技術を用い、基板材料からモジュールの高周波特性、実装時の熱・機械特性等に関し測定評価を行っている。
加えて、連成解析の分野では,マルチフィジィクス シミュレーション技術を用い、ミリ波帯アンテナやモジュールの特性や実装モジュール化時の熱、応力等について樹脂効果シミュレーション解析も実施。
これら3つのソリューションにより、単なる材料提供ではなく、トータルで顧客のニーズに答えると共に、コスト低減や開発の効率化にも貢献するサービスを実施中だ。
R-5515を使用したミリ波レーダ用アンテナは、2020年頃に発売される量産車に搭載される予定。
また、同社では、R-5515が持つ低伝送損失の特性は今後普及が期待される次世代通信規格5G用のアンテナやモジュール等にも最適だとし、幅広い分野での需要増を狙っている。