パナソニックエナジーは12月12日、電気自動車(EV)の車載用リチウムイオン電池の更なる性能向上を目的に、米国のリチウムシリコン電池メーカーである「Sila Nanotechnologies (シラ・ナノテクノロジーズ/以下、シラ社)と、電池の負極で使用する次世代シリコン材を調達するための売買契約を締結したことを発表した。
シリコン材は、現在リチウムイオン電池の負極材に広く使用されている黒鉛に比べ、理論値で約10倍という高い容量を有する特徴を持ち、電池性能向上の鍵となる材料と言われているが、充電時に膨張しやすい特性により電池を劣化させるため、その添加率を高めることが困難という課題があり、業界では長年研究開発が行われてきたと云う。
パナソニックエナジーでは、世界規模でEVシフトが進む中、その需要に対応するため、車載電池の生産拡大や、EVの航続距離向上に寄与する電池セルのエネルギー密度の向上や長寿命化を推進。従来からシリコン材を使いこなす技術開発を積極的に行い、業界で初めてシリコン材を使用した車載電池の量産化に成功するなど、エネルギー密度の進化で世界をリードしてきた。
しかし、2030年度までに電池のエネルギー密度を現状の800Wh/Lから+25%の1,000Wh/Lまで向上させるという目標達成のためには、更に高容量な次世代シリコン材による技術革新が必要であることから、シリコン材の調達網拡大のため、今年7月の英国のネクシオン(Nexeon)社との売買契約に続いて、米国のシラ社と車載電池の負極に使用する次世代シリコン材の売買契約を締結。
シラ社の次世代シリコン材「Titan Silicon(タイタン・シリコン)」は、従来のシリコン材と比較して高容量かつ充電時の膨張抑制が可能な材料であることから、自社の電池技術と組み合わせることで、負極材中の黒鉛をより多くシリコンに置き換え、エネルギー密度を向上させることか可能になると云う。
現在、パナソニックエナジーでは、北米を重点地域とした車載電池の生産拡大に向け、サプライチェーンの強靭化に取り組んでおり、材料確保の安定性の観点からも、その現地調達比率の向上を推進。
今回のワシントン州に工場を有するシラ社との戦略的パートナーシップの締結は、北米に於けるサプライチェーン構築のみならず、物流に於けるカーボンフットプリント(※1)の低減や輸送費等のコスト削減にも寄与すると考えていると云う。
※1)カーボンフットプリント:原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2換算で表した数字。