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2020年10月29日【アフター市場】

パナソニックの4~9月期連結決算、大幅な減収減益に

山田清志

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パナソニック梅田博和CFO

 

 パナソニックは10月29日、2020年4~9月期連結決算を発表した。それによると、売上高は前年同期比20.4%減の3兆591億円、営業利益が同31.1%減の966億円、当期純利益が同51.6%減の488億円と、大幅な減収減益だった。新型コロナウイルスの影響などで、全セグメントで減収となった。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

ソニーとの差は開くばかり

 

「2020年第2四半期(7~9月)は、売上高が引き続き減収となったが、オートモーティブ、アプライアンスなどの改善により、第1四半期(4~6月)からの回復が顕著になった。利益は売上高が回復する中、固定費水準を維持し、第1四半期から大きく改善、前年からも増益に転換した。また、フリーキャッシュフローはコロナによる第1四半期のマイナスから、大幅なプラスへ改善している」

 

 

梅田博和CFOは第2四半期決算について、このように前向きな総括をしたが、同業他社に比べて物足りないものであることは言うまでもない。なにしろ、前日に発表したソニーの決算は増収増益で、通期業績見通しを大幅に上方修正したからだ。文字通りソニーとの差は開くばかりである。また、ほかの製造業でも上方修正をする企業が少なくない。

 

それに対して、パナソニックは通期業績見通しを売上高6兆5000億円(前期比13.2%減)、営業利益1500億円(同48.9%減)、当期純利益1000億円(同55.7%減)に据え置いている。ここで第2四半期(7~9月)のセグメント別実績を見てみよう。

 

アプライアンス(AP)は、日本を含めて市況は回復傾向だが、コロナの影響によって減収。利益はコロナによる減販損を、冷蔵庫、欧州の空調等の増販益や販促促進費などのコストコントロールでカバーして増益になった。

 

ライフソリューションズ(LS)は、空質関連事業の堅調さはあったものの、住宅新築着工戸数の減少影響などにより減収。利益は固定費削減を徹底したが、減販損によって減益となった。

 

コネクティッドソリューションズ(CNS)は、中国での実装機販売が好調だったが、アビオニクスの落ち込みをカバーできずに減収。利益はLS同様に徹底した固定費削減などでコスト改善を図ったものの、大きく減益となった。

 

 

テスラ向け新型電池の開発にすでに着手

オートモーティブ(AM)は、車載電池が増収、車載機器で注力領域であるIVI(情報と娯楽の双方を提供するシステム)が伸長するなど、商品ポートフォリオの入れ替えは着実に進んだが、ディスプレイオーディオなどの販売減が影響して、セグメント全体では若干の減収になった。利益は車載機器の固定費削減、北米車載電池工場の合理化などにより増益となった。

 

「セグメント全体での黒字に加え、円筒形車載電池事業も全体で黒字を達成している。今後も高容量化などをさらに進め、当社の強みを最大限活かし、事業の競争力強化を図っていく」と梅田CFOは強調する。

 

インダストリアルソリューションズ(IS)は、情報インフラ向けの販売が引き続き好調だったが、車載向けの減販が響いて減収。利益は減販損があったものの、固定費削減などでカバーして増益となった。

 

決算説明後におこなわれた質疑応答では、テスラとの事業に関する質問が相次ぎ、半分以上を占めた。その中で、梅田CFOが明らかにしたのが、テスラ向け新型電池「4680」についてすでに開発に着手しているということだ。

 

「4680」とは、テスラのイーロン・マスクCEOが9月の事業説明会で、構想として発表した高容量の円筒形電池だ。しかも、自社生産に乗り出して、電池のコストを半減させると豪語した。それを受けて、パナソニックの株価は下落したが、実は発表直後から開発に着手して、試作ラインを立ち上げる準備を進めているという。

 

「テスラとは従来からいろいろな電池について打ち合わせを行っている。高容量の電池にはテスラからの強い要請もあるし、私どもが目指す姿とも一致することから、しっかりと開発を行っていく」と梅田CFOは力強く話し、こう付け加えた。

 

「イーロン氏は2030年に4680電池で3テラギガワットを達成したいと言っていた。その規模感はアメリカの工場、ギガファクトリーの80個分になる。われわれ1社でとてもまかなえるものではないので、われわれが強みの出る分野で競争していきたいと考えている」

 

テスラ事業は四半期ベースでようやく黒字化を果たしたが、今後もパナソニックの業績や株価はテスラに大きく左右されそうだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。