オンセミ、ハッサーン・エルコーリー社長兼CEO会見で日本に意欲
米半導体大手、オンセミのハッサーン・エルコーリー社長兼CEO(最高経営責任者)は11月8日、オンラインで記者会見を開き、日本市場での事業強化を表明した。特に自動車の電動化に欠かせないパワー半導体のSiC(シリコンカーバイド)の拡充を示し、日本の大手自動車メーカーなどと直接的なエンゲージメントを構築していることを明らかにした。(佃モビリティ総研・松下次男)
記者会見は日本のメディア向けに行ったもの。エルコーリー社長兼CEOはまず冒頭に「オンセミはインテリジェントなパワーソリューションとインテリジェントなセンシングソリューション」を提供する企業との方針を示し、注力分野として自動車とインダストリアルを掲げた。
これらの分野は破壊的なテクノロジーを推進し、持続可能なエコシステムを強化する市場として急成長する可能性を秘めており、オンセミのインテグレーションな事業展開と合致するとの見方を示した。
自動車でいえばEV(電気自動車)をはじめとした電動化やADAS(先進運転支援システム)、自動運転技術などに向け、オンセミのSiCやイメージセンサーを提供することにより、技術の進化を加速させ「環境対策、交通事故ゼロをサポートしたい」とした。
既に主要なテクノロジーリーダー企業(大手自動車メーカー等)とLTSAを締結
事業活動では、とくにSiCの成長に言及。計画では、今後3年間でLTSA(長期供給契約)を通じ40億ドルのSiCの売り上げを確約しているとし、米ニューハンプシャー州ハドソンの生産施設も拡張済み。
日本でも大手自動車メーカーなどの主要なテクノロジーリーダー企業と日本での年間売上の2倍以上となるLTSAを結んだことを明らかにした。
全体の事業も着実に進展し、過去5四半期連続で過去最高の業績を達成。S&P500インデックスに採用されているほか、フォーチュン500企業にも選ばれている。日本でも過去6四半期連続で過去最高の売り上げを達成した。
エルコーリー社長兼CEOはオンセミのSiCの強みとして「基板からデバイスまで、エンド・ツー・エンドで展開できることだ」と話す。これにより自動車の電動化に向け、デバイスからパッケージングまでの提案が可能になったと強調した。
2040年の環境問題に係るネットフリー宣言実現に向け推進させていく
オンセミは2021年にGTアドバンスト・テクノロジーズを買収し、ウェーハを内製化することで、ワンストップ化を実現。この結果、競合のドイツのインフィニオンなどと比べて、トータルでSiC供給の強みが発揮できるとしたほか、わが国のロームなどよりも先進性を生かしたいとした。
SiCはシリコンなどと比べ高価だが、パワー半導体でクルマの電動化を効率化すれば、システム全体のコスト低減に繫がるとも強調した。また、オンセミが掲げる2040年の環境問題に関するネットフリー宣言実現に向けても、推進したいと述べた。
日本での生産体制では先週、新潟の半導体工場(6インチウェーハ製造)の売却を発表。同工場は1985年に旧三洋電機(現パナソニック)が設立し、2011年にオンセミが買収していたが、マーキュリアインベストメント、産業創生アドバイザリー、福岡キャピタルパートナーズとの間で売却に合意した。
これは生産体制の再構築、製造ネットワークの最適化の一環として実施するもので、2022年度第4四半期に取引が完了する予定。
一方で、エルコーリー社長兼CEOは会津の工場、デザインセンターに投資し、日本での開発、生産体制を強化していく考えを示した。また、日本市場では電動化やADAS/自動運転などに向け、2倍の市場成長を目指すと表明した。