オンキヨーホームエンターテイメント(以下、オンキヨー)は8月2日、東京証券取引所JASDAQ(ジャスダック/スタンダード)市場において、8月1日付で上場廃止となったと発表した。
オーディオ外の事業参入に失敗
オンキヨーは、縮小するオーディオ市場にあって、2005年にインテル社(Intel)と資本提携した他、2008年にソーテックを買収し、パソコン事業に参入。しかし、リーマンショックによる環境変化もあって、本業の立て直しを優先し、パソコン事業から撤退した。
その後、楽器業界への活路を求めて、2012年にギブソン社、2015年に河合楽器製作所と資本提携。並行してホームオーディオ事業の維持拡大のため、2012年にティアック、2015年にはパイオニアとも資本提携し、ホームオーディオ事業の統合を行ったが、2018年にはギブソン社が倒産、またパイオニアの上場廃止等に見舞われ、欧州販社を売却した。
主力事業売却へ
そして2019年、主力事業であるホームオーディオ事業の売却契約を、サウンドユナイテッド(Sound United)社と締結したが、お互いの条件達成が難航し白紙に。
その直後、今度は米国の家電企業であるヴォックス社(VOXX International)と提携し、同社の日本国内の代理店となる一方、その翌年の2020年、ヴォックスグループの子会社をオンキヨーの米国販売代理店とし、今年4月には、ホームオーディオ事業売却の基本合意を締結。現在、契約のクローズに向けての取り組みを進めている。
新たなビジネスモデルへの挑戦
オンキヨーは、現在のビジネスモデル(製造販売)での競争が困難であるとし、新たなビジネスモデルへの変革として、2016年より「サウンド・バイ・オンキヨー(Sound by Onkyo)」でのコ・ブランド戦略を強化。2018年には、世界的なテレビメーカーである中国のTCL社と提携し、ヘッドホン等やサウンドバーといった製品群にオンキヨーブランドのライセンス供与を開始。また2019年には、世界最大の補聴器メーカーの一つであったドイツのシバントス社(旧シーメンス社)と、オンキヨーブランドの補聴器に関する協業も実現した。
今回のヴォックス子会社へのホームオーディオ事業売却契約では、売却対象事業にアーンアウト条項(※1)が付けられており、今後、オンキヨーのレガシービジネスは、全て欧米アジアの会社へのライセンス事業に切り替わる。またOEM事業としては、これからもブランドや技術を使った各ジャンルに音のソリューションを提供。
加えて、新ビジネスとして、AIを核とする振動を使った食品関連ビジネス、振動センサーを使った医療、インフラ系ビジネスの研究開発を、京都大学、奈良先端科学技術大学院大学、富山大学、東京農業大学等とそれぞれ進めており、各々についてビジネスとして立ち上げていく予定だと云う。
債務超過の解消失敗と上場廃止
オンキヨーは、以上10年の大きな変革において、数多くの資本提携、MSワラントといった株主へ大きな犠牲を強いる新株発行にも頼ったが、昨年3月末時点で債務超過に陥った。
しかし、今年6月単月の速報レベルの連結業績が営業黒字となったこともあり、ヴォックス社への事業譲渡を完了できれば債務超過の解消も可能として、8月末を期限としていた売却をヴォックス社との合意の上、6月末迄に完了させることを目指したが、欧州当局の競争法クリアランス等が間に合わず(※2)、東京証券取引所のルールである1年での債務超過解消に失敗。8月1日付で東京証券取引所JASDAQ市場において上場廃止となった。
今後について
オンキヨーは、上記以外のリストラ策として、複数個別単位での事業の売却等、体制の見直しを進めているほか、現在、みらい證券において、株主コミュニティへの加入を検討。以上詳細については、内容が決まり次第、随時開示していくとしている。
※1)アーンアウト条項:M&Aの完了後一定の期間(通常1~3年)に、売却した事業・会社等が契約によって定められた業績を達成した場合に、買い手企業が売り手企業に追加の対価を支払うもの。
※2:7月末時点、残り1ヵ国。売却完了に向けた準備を進めている。