オン・セミコンダクターは3月4日、新製品のRDMシリーズ・シリコン光増倍率(silicon photomultiplier、SiPM)アレイを発表した。
新製品「ArrayRDM-0112A20-QFN」は幅広いインテリジェントセンシング・ソリューションにLiDARセンサ機能を拡張。市場初の車載認定済SiPM製品であり、自動車業界をはじめさまざまな業界におけるLiDARアプリケーションで高まる需要に対応するとしている。
ArrayRDM-0112A20-QFNは、オン・セミコンダクターの市場を代表するRDMプロセスをベースとした、モノリシックな1×12配列のSiPMアレイ。近赤外(NIR)光に対して高感度を実現し、905ナノメートル(nm)で業界トップクラスの18.5%の光子検知効率(photon detection efficiency、PDE)を実現。SiPMの高い内部ゲインにより、シングルフォトンのレベルまでの感度を可能にする。この機能は、高いPDEと組み合わせることで、最も弱いリターン信号を検出でき、反射率の低いターゲットでも、より遠くまで到達距離を広げることができるという。
SiPM技術は近年、勢いを増しており、その独特な機能セットにより、幅広い市場の深度センシングアプリケーションに適したセンサとなっている。SiPMは、明るい太陽光条件下で、長距離レンジングに対して最高のS/N性能を提供する能力を持っている。供給バイアスが低く、気温変化に対する感度が低いなどの付加的な利点により、従来型のアバランシュフォトダイオード(avalanche photodiode、APD)を使用するシステムのアップグレードになる。SiPMは、CMOSプロセスで量産されており、検出器のコストを最小にできるため、広範囲な市場のLiDARソリューションを可能にする。
レーザー光を使った物体の距離の測定は、自動車、民生、産業用のアプリケーション分野に広がっている。自動車では、LiDARは、他のセンシングモダリティを補完し、冗長性を提供することにより、車線維持や交通渋滞支援などの機能を支援し、安全性と運転支援システム(ADAS)を改善する。LiDARは、ロボットによる輸送など、完全自動運転のユースケースで一般的に使用されるようになっており、環境をリアルタイムで安全にナビゲートする。ArrayRDM-0112A20-QFNの高PDEによって、これらの機能をサポートするLiDARシステムは300メートルを超える距離に及ぶことが実証されているという。
オン・セミコンダクターのオートモーティブセンシング部門で、シニアディレクターを務めるウェイド・アペルマン(Wade Appelman)は、次のように述べている。「LiDARによって提供される高解像度の深度データにより、低照度条件下での瞬時で正確なオブジェクト識別が可能になります。ArrayRDM-0112A20-QFNは、最初の車載品質認定済のSiPMとして、安全と自律性の次のレベルに向けた長距離でコスト効率の高いLiDARソリューションを可能にします。当社は、多様で相補的なセンシングモダリティを提供することで、センサポートフォリオを継続的に強化し、より高いレベルのADASと自動運転への道を切り開きます」
Yole社のテクノロジー&マーケットアナリストであるPierrick Boulay氏は、次のように述べている。「Yole Développement(Yole)では、LiDARはレベル2+以上に到達するために必要な機能を備えた、自動車の完全な自律化に向けて、必要不可欠なコンポーネントであると考えています。車載品質に認定済かつ十分な性能を備えたセンサの製造は、自動車アプリケーションでLiDARを大量に採用するための重要な要素であり、現在の傾向に基づいた2019年から2025年のCAGRは+144%と予想されます」
・Web ページ:ArrayRDM-0112A20-QFNデバイス製品
・Web ページ:ArrayRDM-0112A20-QFN評価ボード
・ホワイトペーパ:シリコンフォトマルチプライヤ(SiPM)センサの概要