ニューヨーク州の工場を増強し、イメージセンサの供給量を大幅増へ
オンセミは10月25日、東京都内で記者会見を開き、新開発の車載用150dB(デシベル)超ハイダイナミックレンジイメージセンサなどを公開した。同社は車載カメラ用イメージセンサで世界トップであり、新開発のイメージセンサは2024年をめどに量産開始する計画だ。(佃モビリティ総研・松下次男)
記者会見はプライベートインベント「JASS(ジャパン・アニュアル・センシング・サミット)開催に合わせて、同社のイメージセンサ製品事業の最新動向を発信したもの。同時に、主力製品をデモンストレーションした。
オンセミのイメージセンサ事業はオートモティブと産業向けが主体。会見したロス・ジャトゥ・シニア・バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャは、事業戦略の一環としてニューヨーク州の工場を増強しイメージセンサの供給量を大幅に増やす考えを示した。
自動車産業を中心に半導体不足から車両減産を余儀なくされていることなどに対応するもので、同工場の増強で能力倍増の可能性を示唆した。
オンセミは車載用製品のウェハ前工程から出荷テストまで自社で行う製造能力を有しているが、同時に汎用製品の外注化も進めている。このため、内製、外注をうまく活用することで車載用センサーの生産能力をアップする。
ジャトゥ氏は車載用半導体全体の不足問題では「クルマに使用されている半導体は複雑であり、そのうちの一つでも不足していれば部品が作れない。このため、半導体不足問題は2023年まで続くだろう」と話した。
車載向けでは、「見えなかったもの見えるように、それが車の安全性を高める」とした150dB超ハイダイナミックレンジイメージセンサを公開した。
車載用センシングカメラ用イメージセンサで67・5%のシェア(2021―2022年)
クリス・アダムス・バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャはこれまでのイメージセンサは130dB程度がマックスだったが、オンセミは世界で初めて150dBを開発したと強調。
同センサーの特徴はダイナミックレンジが広く、信号の色彩なども忠実に再現できることだ。すでにサンプル出荷を始めている。
オンセミは車載用イメージセンサで10年以上に渡ってマーケットシェアトップを続けている。テクノ・システム・リサーチ(2021―2022レポート)によると、車載用イメージセンサ全体では46%のシェアだが、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術向けなどの車載センシングカメラ用では67・5%のシェアを持つ。
また、日本車メーカーとの協業も積極的で、一例としてトヨタ/レクサス車のパノラミックビューモニタシステムに「AR0147」製品を供給しているほか、スバルのアイサイト向けを共同開発した実績などを紹介した。
イメージセンサの画素数についても、高画素化を進めており、2019年には業界初の800万画素車載グレートイメージセンサを開発。現状、一般的な車載用イメージセンサの画素数は100万画素、200万画素程度だが、ADAS、自動運転技術の進化とともに、数年後には800万画素を持つイメージセンサが普及しているだろうとの見方を示す。
さらに1200万画素、1600万画素を持つイメージセンサも視野に入れているとしている。
このほか、オートモティブセンシングではRide Visionと共同開発している二輪車向けのADAS用センシングについても公開した。
産業用では、スマートiToFによる3D(三次元)センシングを新たに製品化したと紹介した。スティーヴン・ハリス・マーケティング担当シニアディレクタによると、同センシングを採用することで生産ラインのスピードを落とさずに3Dソリューションが出力できるとした。