国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)は1月25日、幕張新都心エリアにおいて、NTTドコモ(以下「ドコモ」)と共同でオンデマンド乗合交通システム「AI運行バス®」の実証実験を実施すると発表した。
この実証はNEDO事業で行う「AI運行バス」の3カ所目の実証実験で、幕張新都心においてさらに配車効率を向上した新しいアルゴリズムを用いて実証実験を実施し、実用化を目指した検証を行うもの。
ビジネスや観光、日常生活など多様な移動ニーズに対応するには、便利で効率的な移動手段の提供が必要とされている。これに対し、近年は鉄道やバスなどの異なる移動手段を統合して提供するMaaS(Mobility as a Service)が、その課題解決につながるとして注目されている。
NEDOは、2018年度から「人工知能(AI)の社会実装の実現に向けた研究開発プロジェクト」を実施しており、その一環として、ドコモと共同で「人工知能技術を用いた便利・快適で効率的なオンデマンド乗合型交通の実現」の実証実験を行ってきた。これまでの2カ所の実証実験では、2018年10月~12月と2019年10月に横浜市臨海部(みなとみらい21と関内エリア周辺)で、また2019年12月~2020年2月と2021年7月~8月には横須賀市の逸見地区およびその周辺で延べ数万人を対象に「AI運行バス」を運行。実証実験では「AI運行バス」の予約時に観光施設やグルメスポット、イベント情報を提供したことによる地域の周遊効果や、公共交通機関が充実していないエリアでの住民の利便性向上などに高いニーズがあることを確認した。一方で、「AI運行バス」の本格的な実用化に向けては、さらに配車効率と利便性の向上が必要であった。
こうした課題を解決するため、NEDOは今回、ドコモ、未来シェア、北海道大学と共同で、2022年2月~3月に人流の変動が激しくAIの計算が複雑になる幕張新都心エリアにおいて、プロジェクトで新たに開発したアルゴリズムによってさらに配車効率を向上したオンデマンド乗合交通システム「AI運行バス」による実証実験を実施する。
今回の実証実験では、プロジェクトで未来シェアが開発したAI配車システム「SAVS(Smart Access Vehicle Service)」に北海道大学が新たに開発したアルゴリズムを搭載し、「AI運行バス」の配車効率を高度化している。従来のアルゴリズムでは、計算時間を抑える目的で「すでに受け入れた配車予約の順序は変更しない」という条件で計算していたため、配車効率に無駄が出る場合があった。一方、新しいアルゴリズムでは、MaxSAT(Maximum satisfiability problem)という数学の手法を活用し配車予約を論理的に問題整理することで、すでに受け入れた配車予約も柔軟に調整しながらなるべく効率的な配車ルートを探し出すことができる。これにより、人流が激しく変動する幕張新都心エリアでも待機時間を短縮するなど、より多くの利用者に効率的に利用してもらえることを見込んでいるという。過去2カ所の実証実験から得られたデータも生かしながら、「サービス性」と「効率性」のバランスに優れた新システムの実証実験を行い、交通利便性の向上や地域経済の活性化を目指すとしている。