NTNは5月24日、新規鋼材と特殊熱処理技術の組み合わせにより、水素に起因する軸受の早期破損に対して、同社の標準軸受と比較して3倍以上の長寿命化を実現した「耐水素脆性軸受」を開発したと発表した。
なお、開発品は、5月26日~7月30日に開催される「人とくるまのテクノロジー展2021 オンライン」に参考出展される。
NTNが今回開発した「耐水素脆性軸受」は、新規鋼材の採用と新たに開発した特殊熱処理技術により、水素原子が鋼材に侵入することで、鋼材の強度が低下する水素脆性による早期破損を抑制し、長寿命化を実現した商品。
軸受の軌道面表層に硬質で微細な金属化合物が多数分散する新規鋼材を使用することで、希薄な潤滑条件下における金属接触での摩耗や、水素原子の発生源となる金属新生面(*1)の露出を抑制。また、水素原子が発生した場合においても、その微細な金属化合物が、水素原子の軸受内部への侵入速度(拡散)を抑制すると云う。
<水素原子が鋼に侵入し、早期破損に至るメカニズム>
その結果、開発品の寿命を同社標準軸受と比較して3倍(*2)以上に向上させることに成功。さらに、特殊熱処理工程における焼入れにおいて、軸受軌道面の窒素濃度を高める浸窒処理を行うことで、耐異物性も向上し、異物混入潤滑条件下における長寿命化も実現した。
なお、新規鋼材には、熱処理工程におけるCO2排出量を減少させる成分を選定。環境負荷の低減も図られていると云う。
<NTNの標準品と開発品の比較写真>
NTNは、この開発品をグローバルに提案し、自動車や産業機械などのさらなる信頼性向上に貢献していくとしている。
*1:金属表面のごく薄い酸化鉄層が除去された面。
*2:多量の水分を潤滑油中に含む急加減速運転条件において。
[耐水素脆性軸受について]
<特長>
・長寿命化:標準軸受と比べて3倍以上の長寿命化を実現。
・耐異物性の向上:焼入れ時に軸受軌道面の窒素濃度を高める浸窒処理により、異物混入潤滑条件下における寿命を向上。
<用途>
・自動車および産業機械全般。
<水素脆性寿命試験結果>
[問い合わせ先]
問い合わせフォーム:https://www.ntn.co.jp/cgi-bin/inquiry/common/index.cgi
(※https直後のコロン「:」を半角に変更)
■NTN:https://www.ntn.co.jp/japan/index.html
■人とくるまのテクノロジー展2021 オンライン:https://aee.expo-info.jsae.or.jp/ja/online/