NTNは5月26日、前輪用ハブベアリングに転舵角度を調整する機構を組み合わせたステアリング補助機能付ハブベアリング「sHUB」を、後輪用に改良した「Ra-sHUB(ラスハブ)」を開発したと発表した。
「Ra-sHUB」のベースとなったステアリング補助機能付ハブベアリング「sHUB」は、ハブベアリングでは世界トップシェアを誇る同社の設計、製造技術とモータなどの制御技術を組み合わせ、左右各輪の転舵角度の個別補正が可能なモジュール商品。
2018年の開発発表後、車両の応答性の向上や燃費改善に貢献する商品として販売されている。今回、この技術を応用し、大きな転舵角度を持ち、あらゆる懸架装置に対応できる後輪転舵システムとして開発に至ったもの。
現在、広く流通している後輪転舵システムは、適用することで、ホイールベースが長い大型車両においても最小回転半径を小さくするとともに、走行安定性を高め、安全な走行を可能にする。
しかし、これらの既存の後輪操舵システムは大型なうえ、高級車に採用されるマルチリンク方式(独立懸架式サスペンションのひとつで、複数のリンクで車輪を支え、挙動を制御する)など一部の懸架装置のみに適用が限定されているほか、構造上大きな転舵角をとることが困難とされている。
NTNが今回開発した「Ra-sHUB」は小型で、後輪の懸架装置の種類を選ばず、従来のハブベアリングと同様にさまざまな車両への搭載が可能だという。これまで、トーションビーム(左右のアームを鋼管でつなぐシンプルな構造の懸架方式)などのリンク機構が無い懸架装置で後輪転舵するためには、大掛かりな車両の設計変更が必要だったが、「Ra-sHUB」は比較的容易に搭載でき、あらゆる懸架装置の車両において後輪転舵を実現するとしている。
<Ra-sHUBの特長>
(1) 後輪の角度を左右独立して制御
(2) あらゆる懸架装置に搭載可能
(3) コンパクトな構造
(4) 高剛性、高応答性
(5) 大きな転舵角(±10°)
「Ra-sHUB」は、これらの特長を生かし、車両の情報をもとにタイヤの転舵角度を左右別々に制御することで、車両のコーナリング性能や高速直進時の安定性の向上に貢献。また、タイヤの走行抵抗を抑えることで、燃費改善にも貢献するとのこと。
今後、自動運転技術の開発や普及が進めば、車両運動制御はさらなる高精度化が必要とされるほか、より高い安全性を求めて後輪転舵へのニーズや後輪転舵角度の拡大が見込まれる。
なお、同開発品は5月26日~7月30日に開催される「人とクルマのテクノロジー展2021 オンライン(人くる2021)」に出展される。