NITTOKU(以下、ニットク)と古河電気工業(以下、古河電工)は、巻線機で世界トップシェアのニットクのファクトリーオートメーション(FA)ソリューションに、古河電工のレーザ溶接技術および銅材料評価技術を組み合わせた、電動車(以下、xEV)向けモータ用レーザ溶接機を製品化した。
同製品は、12月2日~4日開催予定の「Photonix2020」で初公開され、会期中、実機展示および平角線の溶接加工を実演。実演設備では、古河電工の新製品「Blue-IRハイブリッドレーザ」を用いて平角線の配列誤差を計測・補正し最適な位置にレーザを走査し継線(注1)を行うこともできる。
世界の自動車市場で、xEVの需要が急速に高まりつつある現在、その主動力となるモータには、より小型・軽量・高効率化が求められている。また今後、小型・高出力モータにおいては、平角線を用いたモータが主流になる見通しもあると云う。
この平角線の継線工法では、主にTIG溶接(注2)が用いられているが、任意箇所を狙って溶融することができず、平角線の配置に高い精度が求められる。
一方、レーザ溶接は、非接触であるため画像処理技術との相性も良く任意の箇所を狙った選択的溶融が可能なため、少ない入熱で効率の良い溶接ができる。しかし、材料の純銅は、熱伝導率が高く、ファイバレーザの波長に対する光吸収率が低いことから、入熱制御が難しく、加工時に溶融池やキーホールの形成が安定せずに加工欠陥(スパッタ・ブローホール)が発生するといった課題もある。
そこで両社は協業し、ニットクの精密FA技術と、古河電工のレーザ加工・銅材料評価技術を組み合わせることで、従来比10倍の高速サイクルタイムと高品質溶接を実現するxEV向けモータ用レーザ溶接機を製品化。
省力化FAシステム、高品質レーザ継線技術、アフターサービスまでをワンストップで提供することで、モータ生産工程の効率化(高速化・工程の簡素化・品質安定化)を実現、持続可能な社会に貢献するとしている。
[装置・技術の概要]
・ニットクの精密FA技術と古河電工のレーザ加工技術(ビームモード制御技術(注3)・Blue-IRハイブリッドレーザ技術(注4))とを組合せ、溶接工程での品質と生産性向上を両立を可能に。
・ニットクは、平角線の金型成型による精密加工に加え、古河電工のレーザ発振器の更なるパフォーマンスを高めるための独自制御技術を使用した生産設備ラインを実現。
・古河電工のレーザ溶接技術により、平角線間の高さ・隙間ギャップなどにも対応したモータの継線が可能となり、工程の簡素化を実現。
・製品は、2020年12月から、ニットクにて受注開始。またモータ形状、サイズ、加工工程に応じた設備仕様を提案。
・海外工場においても、ニットクの海外拠点からメンテナンスを実施しサポート。
注1)継線:線材同士の接合。
注2)TIG溶接:電気を用いたアーク溶接方法の一種で、電極と母材間に高電圧を加え、高電流を流すことで起こるアーク放電によって生じる熱を利用して溶接。鉄やアルミ、銅などあらゆる金属の溶接に適応されている。
注3)ビームモード制御技術:ビームモード変換素子を用いてレーザのビーム形状を制御する技術。レーザ照射部の溶融池を安定化させることで、溶融金属の飛散や内部欠陥の防止などレーザ溶接の高品質化を実現可能。
注4)Blue-IRハイブリッドレーザ:銅への吸収性が良い青色レーザ(波長:465nm)と深い溶け込みが得られる近赤外レーザ(波長:1070nm)を組み合わせたレーザ。青色レーザの光吸収特性により安定した入熱制御が可能になり、高速・高品質を両立した銅の溶接が可能。
[Photonix2020出展について]
– 会期:12月2日(水)~4日(金)
– 会場:幕張メッセ 1ホール、ブース#2-26(古河電工ブース)
実演設備は、古河電工の新製品であるBlue-IRハイブリッドレーザと、ニットクの画像処理システムを備え、平角線の配列誤差を計測・補正、最適な位置にレーザを走査し溶接を行うことができる。また、当日は他にも、古河電工のファイバレーザを用いた加工ソリューションも併せて展示される。
■Photonix2020:https://www.photonix-expo.jp/ja-jp.html
■NITTOKU:https://nittoku.co.jp/