日産自動車は、車両の静粛性の向上と軽量化を可能にする新しい遮音材「音響メタマテリアル」を、米国のラスベガスコンベンションセンターで開催されるCES 2020(Consumer Electronics Show 2020/開催:1月7日~10日/ブース:北ホール6306)に出展する。
日産は2008年頃、当時すでに電磁波領域で高感度アンテナなどに活用されていたメタマテリアルの技術に着目し、同技術の音響波への応用を目指して、研究を開始。今回、音響メタマテリアルの基本原理を解明し、高い遮音性能を持つ遮音材の開発に成功した。
この新遮音材は、周期的な格子構造とフィルムを組み合わせたシンプルな構造で、音が伝わる際の空気の振動状態を材料が制御。音の透過を抑制することで、ロードノイズやエンジン音など、車内に入る自動車特有の騒音を広い周波数帯(500-1200Hz)で効果的に遮断すると云う。
現在、この周波数帯の遮音には、主にゴム板などの重い板材が使われているが、今回の遮音材は、こうした素材に比べ、約4分の1の重量でありながら、同等の遮音効果を実現。さらに、シンプルな構造のため、量産化により、従来の遮音材に対し、同等あるいはそれ以上の価格競争力を実現する可能性もあると云う。
日産は、これにより、将来的には、車両重量への影響やコスト面から、これまで遮音材の使用が制限されていた車種への幅広い活用が期待できるとしている。
車両の軽量化は、燃費や電費の向上による環境負荷の低減などに貢献。静粛性向上は、移動時間をより快適なものとする。
日産は今回の「音響メタマテリアル」に加え、「ニッサン インテリジェント モビリティ」を今後も進め、ユーザーを未来へと導いていくとしている。
[開発者への一問一答]
日産の総合研究所で「音響メタマテリアル」の開発を担当するエンジニアの三浦進氏は、この新素材の開発の狙い、背景について、以下のように話している。
Q1: 新しい遮音材「音響メタマテリアル」について教えてください。
A1: 日産は、新しい遮音材「音響メタマテリアル」の開発に成功しました。格子構造の上にフィルムを貼るというシンプルな構造で、そのフィルムが音に対して効率的に震えるという特徴があります。これにより圧倒的な静かさと軽量化を両立します。
Q2: 音響メタマテリアルはどのような点が画期的なのでしょうか? また、どの程度軽いのでしょうか?
A2: これまでは、例えばゴムの板のような重い材料で音の侵入を遮ってきました。音響メタマテリアルは、従来の材料と比較して4分の1の軽さで同じ遮音性を実現します。圧倒的な静かさと軽量化を両立するということが新しいブレークスルーです。
Q3: 素材が軽いということによるメリットは何ですか?
A3: クルマを軽くするということは、電力消費量の削減や、運動性能の向上にもつながります。これまで重い遮音材を搭載できなかった車両にも今回の材料が適応できる可能性があります。
Q4: 音響メタマテリアルはどのような仕組みになっているのでしょうか? なぜ遮音できるのでしょうか?
A4: 音に対してタイミングよく膜が震え、震えることによって音を効率的に跳ね返すというのが特徴です。結果的に入ってくる音は小さくなります。音が伝わる際の空気の振動状態を材料が制御し、音の透過を抑制することで、ロードノイズやエンジン音など、車内に入ってくる自動車特有の騒音を広い周波数帯(500-1200Hz)で効果的に遮ることができます。
Q5: 音響メタマテリアルの開発のきっかけは何だったのでしょうか? また、なぜその必要性に日産が気づけたのでしょうか?
A5: 日産は2008年頃、当時すでに電磁波領域で高感度アンテナなどに活用されていたメタマテリアルの技術に着目していました。それ以降、同技術の音響波への応用を目指し、研究開発を行ってきました。今回、音響メタマテリアルの基本原理を解明することで、高い遮音性能を持つ遮音材の開発に成功しました。日産はEVのトップランナーです。2010年に初代リーフを出し、お客さまから色々な声を伺ってきました。そこから、静かさが快適な移動空間につながるということを理解しました。
Q6: 遮音性の研究を長年実施する中で、課題は何だったのですか?
A6: 自動車特有の「ゴー」というロードノイズです。EVによってエンジン音がなくなり、残るロードノイズをいかに消すかということが長年の課題でした。
■(日産)CES 2020最新ニュース:https://global.nissannews.com/ja-JP/ces2020