日本精機は4月16日、ヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)のコア部品である「凹面鏡」を生産増強するための「蔵王工場」が、新潟県長岡市の本社隣地(長岡市東蔵王2丁目)で竣工したことを発表した。
蔵王工場は、約1年前に生産を終了した 同社・液晶(LCD)ディスプレイ事業のディスプレイ製造工場跡を改修し、今回、凹面鏡製造工場として蘇らせたもので、工場躯体部分を極力再利用することで無駄な投資を抑制しつつ、「生産性向上/品質向上(クリーン度強化)/省エネ・再エネ」を意識し、生産能力拡大を意図して設計。
現在は、リノベーションおよび成形機や成膜機の搬入・設置が完了しており、今後は、その他設備の設置を経て、凹面鏡生産に向けた準備を進め、欧州カーメーカーなどの監査を受けた上で、秋頃の量産開始を目指していると云う。
<蔵王工場の生産能力拡大のポイント>
(1)生産性向上
・凹面鏡製造におけるミラー成膜工程の生産性を従来比15%アップ。
・検査工程でのカメラ動作改善による検査時間の短縮。
(2)品質向上
・成膜(1F)から検査(2F)までの工程を垂直搬送機で直結し、異物混入対策やマテハン(マテリアルハンドリング)を改善。
(3)省エネ・再エネ
・成形シリンダー部の保温対策により消費電力削減。
・屋上屋根にソーラーパネル敷設し太陽光発電を導入予定。
HUDは、表示装置で生成した高輝度、高精細な画像を光学部品(ミラー)、フロントウィンドウで拡大、反射させることでドライバーの視線の先に表示を提供。フロントガラスの先に投影される“虚像”の「運転情報(車速やナビゲーション等)を、前方を向いたまま(下を向いて、視線を道路から切ることなく)認識できるようにすることで、ドライバーの負荷軽減や交通事故の防止・低減に寄与するデバイス。
その主要部品である「凹面鏡」は、表示装置からの表示像を拡大するために用いられる樹脂製の凹面形状のミラー(鏡)であるが、樹脂はガラスに比べて温度変化や成形で生じる応力などによって形状が変形しやすいため、HUDの光学性能に与える影響が大きく、高精度な形状を作製するためには相当の技術力が必要で、歪みなく鮮明に表示させるためには、光学設計技術だけでなく、キーパーツである凹面鏡の精密さが不可欠であるとのこと。
日本精機では、この「凹面鏡」を重要なキーパーツ(コア部品)と位置付け、製品設計から金型設計、加工、成形、ミラー成膜までを内製化し、一貫して行うことで、高精度・高品質の表示画像を実現していると云う。
2024年の市場規模約2,000億円が、2030年に約3,500億円までに伸長するとの予測もあるHUD市場。その市場で、現在世界シェア第1位(30%)を誇る日本精機は、HUD事業を収益化期待が高いものとして位置付け、2030年の売上1,000億円を目指して、約150億~200億円の資本投入を、「新中期経営計画2026」で公表。今回の「蔵王工場/凹面鏡 生産増強」への投資は、この内容に沿ったものであると云う。
<蔵王工場の概要>
– 建設場所:新潟県長岡市東蔵王2丁目(日本精機本社工場の隣地)
– 構造/階数:鉄骨造/地上2階建
– 敷地面積:4,297㎡(1,299坪)
– 建築面積:2,703㎡(817坪)
– 延床面積:5,240㎡(1,585坪)
– 着工/完成:2023年6月/2024年3月(一部 残工事あり)
– 総投資額:約24億円(改修工事・設備含む)
日本精機グループは、技術により、世界の人々に安心・安全、そして、感動を提供するトータルソリューションカンパニーを目指し、社会価値と経済価値を両立した企業活動を行うことにより社会課題を解決し、持続可能な社会の実現を追及。そして、「日本精機グループ・新中期経営計画2026」に基づき、大きな成長のための強固な収益基盤の構築を図ってゆくとしている。