物質・材料研究機構(NIMS)は、東京化成工業(TCI)と共同で、電気をかけると色が変わる材料「メタロ超分子ポリマー」を安定的に供給できる合成プロセスを確立した。
開発は、NIMSの機能性材料研究拠点 電子機能高分子グループ 樋口昌芳グループリーダーらの研究グループとTCIが共同で実施。一般販売は、TCIにより6月30日から行われる予定。
この材料の普及により、遮光状態と透明状態が電気で切り替え可能な調光ガラス窓の市場拡大が期待できると云う。
電気で着色と透明が切り替わるエレクトロクロミック(EC)材料を使った調光ガラス窓は、ブラインドやカーテンの機能をガラス自体が担うため、すっきりしたオフィス空間や生活空間を作り出す次世代ガラス窓として、世界で実用化研究が進められていると云う。
EC調光ガラスは、EC材料を透明電極が付属した2枚のガラス板で挟み、電極間に電気を流すことで色を変えるが、ガラス上にEC材料を製膜するには真空蒸着設備が必要で、ガラスサイズが大きくなると設備コストが非常に高価になるため、一般の窓への普及は進んでこなかった。
NIMSは2005年、発色性や色変化の応答性に優れ、電源を切ってもその発色状態が維持される低消費電力性を有し、また塗布での製膜が行えるEC材料「メタロ超分子ポリマー」を開発。EC調光ガラスの低価格化が可能なこの材料の量産に向けた生産プロセスの開発が期待されていた。
今回、NIMSとTCIは、メタロ超分子ポリマーの生産プロセスの検討を行い、原料の有機分子から同EC材料の合成に至るまでの一貫プロセスを確立し、安定した品質で、月産百グラムスケール(EC調光ガラスにして数十平米分)製造可能な量産体制を確保。また現在、同材料の実用化を推進するためにさらなるスケールアップにも取り組んでいる。
EC材料は、TCIよりPoly(Fe-btpyb)Purpleの製品名(製品コード:P2789)で、6月30日から一般販売される予定。
両者は、TCIからの材料とNIMSからの用途特許(調光ガラス及びその構成モジュール等を製造するための特許)ライセンスをセット販売することで、次世代ガラスの市場育成が促進されることが期待できるとしている。