物質・材料研究機構(NIMS)と日油は、日本古来の天然塗料である柿渋をヒントに、金属やセラミックス、有機材料などの様々な材料に接着可能で、防錆などの機能を付加できる高分子を開発し、そのサンプル出荷を開始した。
開発品は、使用先の材料を選ばず、様々な機能を付加できる汎用的な接着材料として、インフラ・半導体・自動車産業など幅広い分野での利用が期待できると云う。
接着剤や塗料は、材料表面の保護、美観の向上、新機能の付与など、ものづくりの基幹材料として、重要な役割を担っている。
接着機能の高さは、接着材料と基材の表面との相性によって変化するため、金属や無機・有機など基材によって接着しやすい材料が異なる。そのため、この接着技術を使いこなすには、数多くの接着材料の中から基材ごとに最適なものを選別する必要があり、製造プロセスに多くの時間とコストが掛かっていたと云う。
NIMSと日油の共同研究チームは、汎用性の高い接着材料の実現を目指し、柿渋は古来から日本で用いられてきた天然由来の防水塗料で、魚網や釣り糸、うちわや傘などに使用されてきた実績がある柿渋に注目。渋柿の接着成分であるポリフェノールを活用することで、金属や無機・有機材料など様々な材料の表面によく接着する高分子材料の開発に成功した。
さらに、開発材の汎用性の高さを生かし、金属の防水・防錆剤としての用途のみならず、シリコン半導体用のフォトレジスト材料や、積層セラミックコンデンサに使われる無機微粒子、導電性インクに用いられる金属微粒子の分散剤としての有用性も見出した。
そして今回、日油からこの材料のサンプル出荷を開始。今後、ディスプレイや半導体産業、自動車産業、インフラ補修などの分野での実装を進めるとともに、接着技術が必要とされる多様な分野へ展開していくと云う。
なお、このNIMS 統合型材料開発・情報基盤部門 データ駆動高分子設計グループの内藤昌信グループリーダーと日油の共同研究の成果は、10月19日から11月18日までオンライン開催される「ケミカルマテリアルJapan 2020」、および11月27日にオンライン開催される「NIMS WEEK 2020」で発表される。
■ケミカルマテリアルJapan 2020 -ONLINE:https://www.chemmate.jp/on2020/
■(NIMS)NIMS WEEK:https://www.nims.go.jp/publicity/events/nimsweek/index.html