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2023年4月3日【ケミカル】

ナガセケムテックス、 異材接着への新たな可能性を広げる 室温硬化で高弾性・高伸び特性を両立する新規接着剤を開発

NEXT MOBILITY編集部

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製造業界全体に進むカーボンニュートラルの流れに伴って、軽量化の動きも加速化している。モビリティ分野においても、CO2削減を目的とした燃費向上のために、鋼材からアルミや炭素繊維強化樹脂、プラスチックへ代替するなどといった車体軽量化のニーズが日々強まっており、中でも強度を求められる部材には鋼材を、それ以外には樹脂材をといったように、場所ごとに素材を使い分け、多種の材料特性を組み合わせて構造部材を作り上げる「マルチマテリアル化」が主流になってきている。

 

 

■異材接着に対応した接着剤を

 

マルチマテリアル化において重要なキーワードとなるのが、こうした種類や材質の違う部材同士を接着させる「異材接着」だ。ボルトなどの機械的な結合要素なしに、かつ溶接を必要とせずに異なる材料を接合させる接着剤は大きな注目を集めている。ただひとくちに「異材接着」といっても、材料ごとに線膨張係数や界面特性の違いがあるため、接着剤に求められるものはそれぞれ異なってくるのが、異材接着の難しさである。

 

長瀬産業のグループ会社である化学メーカー、ナガセケムテックスでは、この「異材接着」に注力し、接着剤を次々と発表してきた。記憶に新しいのは、世界最強とも称された高い接着強度を持つ「XNR6852E-3」であろう。そこに今回新たに、室温硬化で機能性のある接着剤「高弾性・高伸びタイプ」が発表された。

 

ナガセケムテックス異材接着サイトはこちら

 

XNR6852E-3の過去記事はこちら

 

 

■高弾性で高伸び、しかも室温硬化

 

今回の開発品はエポキシ系接着剤で、高弾性で高伸びという機能を「XNR6852E-3」に近いレベルで両立させており、かつそれが室温硬化可能である点に大きな特徴がある。エポキシ樹脂は、一般に「硬いが脆く、衝撃性に弱い」という傾向を持ち、硬さ(弾性率)と伸び性は本来トレードオフの関係にある。しかし、同製品は、2つの特性を両立させるのに成功した、しなやかで強い「強靭性」を持ち合わせた製品といえる。自動車などのモビリティ製品の構造材の接着には、事故を想定した優れた耐衝撃性が求められる接着強度と高い靭性が求められるが、同製品はまさにそれに合致しているといえよう。

 

そして、室温硬化を実現させることにより、加熱硬化プロセスをなくすことができ省エネにつながる。また加熱するための設備投資が必要なくなるのでコストダウンにつながる点も大きなメリットだろう。

 

 

■接着強度も実現

 

また接着強度についても既存の室温硬化接着剤ラインナップである汎用品「XNR/H3324」と同等もしくはそれ以上の数値を得られているという。接合の強度を示す指標に「引張せん断」の数値があるが、接着する材料の組み合わせによっては、汎用品「XNR/H3324」を新規開発品が上回る数値を示す。つまり、新規開発品は最強接着剤「XNR6852E-3」と汎用品「XNR/H3324」のハイブリッド的存在というわけだ。

 

 

さらにいうと、室温硬化可能なエポキシ系硬化剤は毒劇物対象の材料が多い中、本開発品は非毒劇物処方となっており、使用に際しての安全性も高まる。

 

 

■モビリティにとらわれない用途

 

新規開発品の用途について、担当者はモビリティ関連など、すでに同社の加熱硬化の製品を使用している業界、とくに耐衝撃性・衝撃吸収性が求められる部材への適用において、室温硬化にプロセス改善できるところにニーズがあると考えているという。あるいは、木材など加熱硬化できない部材を接着する接着剤としての利用も期待されるだろう。これまで同社とそれほど関連性がなかったような業界、たとえば建設関連にもニーズが潜んでいると担当者は考えているそうだ。

 

 

■より環境へ配慮した製品づくりへ

 

カーボンニュートラルに向けた取り組みは今後さらに強まっていく。それに伴い、異材接着の接着剤、なかでも室温硬化の接着剤にはより高い機能が求められるようになるだろう。ナガセケムテックスでは、引き続き、機能性をもたせた室温硬化接着剤の開発に取り組んでいくとしている。例えば通常の接着性を維持した上で、剥がしたいときに簡単にはがせる易解体性接着剤なども視野に入れているとのことだ。また軽量材料の開発やバイオベース材料を導入した新製品開発など、環境配慮型の新製品の開発にも力を入れ、製品を通してカーボンニュートラルに貢献していく考えだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。