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2023年9月21日【事業資源】

ムサシら3社、二輪EV駆動ユニットの合弁で世界を目指す

松下次男

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2024年1月に生産を立ち上げ、3月から量産を開始

 

武蔵精密工業(ムサシ)、台湾・デルタ電子豊田通商の3社は9月21日、インドで二輪車用EV駆動ユニット(eアクスル)の製造、販売を行う合弁会社の設立に合意したと発表した。2024年3月から量産を目指す。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

記者会見で登壇した武蔵精密工業・大塚浩史 代表取締役社長(写真上段)と、合弁新会社・ムサシ デルタ eアクスル インディアPrivate Limitedの瀬戸川 健二CEO(写真下段)

 

東京都内で開いた合弁会社設立調印式・記者会見で、ムサシの大塚浩史社長は合弁設立の狙いについて「巨大なインドの二輪車市場でEV化が急速に進む」見通しに対し、「従来の枠を超え、スピード感を最優先に取り組む」ためと述べた。

 

設立する合弁会社は「ムサシ・デルタ・イーアクスル・インディア」。ムサシが51%、デルタが34%、豊田通商が15%それぞれ出資する。

 

デルタ電子・華 健豪 代表取締役社長(写真上段)、デルタ電子・産業オートメーションビジネスグループAndy Liuゼネラルマネージャー(写真下段)

 

合弁会社は独禁法などの問題がクリアーされ次第、今年12月をめどに設立する計画。生産はムサシ・インド法人(ベンガルール)の工場内にラインを設置し、2024年1月に生産を立ち上げ、同3月頃から量産を開始する予定だ。

 

第1弾は印EVベンチャーBNC供給、次いでアフリカ、アジアへ

 

インドは世界最大の二輪車市場。こうした中、インド政府はカーボンニュートラルに向け、2030年に二輪車のEV化比率を80%にするという大胆な目標を掲げる。

 

豊田通商・グローバル部品ロジスティクス本部 堀崎 太COO

 

このため、2022年時点の二輪EVの普及率は約4%に過ぎないが、四輪車に先行しいて二輪車のEV化が加速していることから、合弁会社を設立し、EV駆動ユニットの生産を立ち上げることにした。

 

生産するEV駆動ユニットはギアボックスとモーターなどで構成され、後輪横側からユニットを取り付けるサイドモーターレイアウトの新しいタイプという。

 

大塚社長は会見で、インドはコミューターといわれる100ccから125ccのバイクが主力であり、この最大のボリュームゾーン用に最適化し、ガソリン車を上回る性能を備えたユニットであることを強調した。

 

 

強みは小型で静粛性に優れたサイドモーターレイアウト

 

最高時速は70キロから80キロを確保し、EVで課題になる静粛性についても直接、後輪を駆動するため、優位性があるとした(具体的には、ベルトやチェーン駆動を採用した駆動ユニットでは騒音の課題があり、一方でインホイールモーターとするタイプは車輪のサイズ内に収める制約があり、パワー面で不利という)。

 

デルタの高効率モーターとムサシの減速機構という両社の得意領域を組み合わせることで、高効率で軽量小型のEV駆動ユニットに仕上げた。約4年前から共同開発に着手しており、既にユニットの完成度が高いことが競合を退けるアドバンテージになるため、これが今回の合弁設立のきっかけとなった。

 

 

第1弾の供給先もすでに決定しており、ムサシの出資・協業先でもあるEVスタートアップ企業のBNC(インド・タミル・ナードゥ州)が調達して、同駆動ユニットを搭載した二輪EVを2024年2月から販売する計画だ。

 

さらにアフリカやアジアの二輪車市場にも挑戦するとし、主にスタートアップ企業と話し合いを進めている。インドをメインの市場としながらも、既に積み上げた青写真を基にグローバル展開を目指す。

 

月産1万台から始動、30年に世界市場で年産100万台に

 

大塚社長は、ムサシの最大の供給先であるホンダ向けについても協議は行っており、採用につながるよう期待したいと話す。

 

武蔵精密工業・大塚浩史 代表取締役社長

 

豊田通商は、こうしたEV駆動ユニットの生産に合わせて、経済ブロック化の観点からサプライチェーン構築や製品のグローバル展開をサポートする。

 

合弁会社のCEO(最高経営責任者)就任が決まっている瀬戸川健二氏はEV駆動ユニットの事業展開について、当初1ラインからスタートするが、3年以内に生産ラインを4~5ラインに増やし、2030年の100万台のユニット生産につなげたいと強調した。

 

合弁新会社ムサシ デルタ eアクスル インディアPrivate Limitedの瀬戸川 健二CEO

 

1ラインの生産能力は年産約10台。二輪EV市場が拡大すれば専用工場建設も視野に入れる。

 

写真向かって左から、デルタ電子・華 健豪 代表取締役社長、デルタ電子・産業オートメーションビジネスグループAndy Liuゼネラルマネージャー、武蔵精密工業・大塚 浩史 代表取締役社長、合弁新会社となるムサシデルタ eアクスル インディアPrivate Limited・瀬戸川 健二CEO、豊田通商・グローバル部品ロジスティクス本部 堀崎 太COO、豊田通商・グローバル部品ロジスティクス本部モビリティパーツ事業部 光武 泰彦 部長
 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。