2024年1月に生産を立ち上げ、3月から量産を開始
武蔵精密工業(ムサシ)、台湾・デルタ電子、豊田通商の3社は9月21日、インドで二輪車用EV駆動ユニット(eアクスル)の製造、販売を行う合弁会社の設立に合意したと発表した。2024年3月から量産を目指す。(佃モビリティ総研・松下次男)
記者会見で登壇した武蔵精密工業・大塚浩史 代表取締役社長(写真上段)と、合弁新会社・ムサシ デルタ eアクスル インディアPrivate Limitedの瀬戸川 健二CEO(写真下段)
東京都内で開いた合弁会社設立調印式・記者会見で、ムサシの大塚浩史社長は合弁設立の狙いについて「巨大なインドの二輪車市場でEV化が急速に進む」見通しに対し、「従来の枠を超え、スピード感を最優先に取り組む」ためと述べた。
設立する合弁会社は「ムサシ・デルタ・イーアクスル・インディア」。ムサシが51%、デルタが34%、豊田通商が15%それぞれ出資する。
デルタ電子・華 健豪 代表取締役社長(写真上段)、デルタ電子・産業オートメーションビジネスグループAndy Liuゼネラルマネージャー(写真下段)
合弁会社は独禁法などの問題がクリアーされ次第、今年12月をめどに設立する計画。生産はムサシ・インド法人(ベンガルール)の工場内にラインを設置し、2024年1月に生産を立ち上げ、同3月頃から量産を開始する予定だ。
第1弾は印EVベンチャーBNC供給、次いでアフリカ、アジアへ
インドは世界最大の二輪車市場。こうした中、インド政府はカーボンニュートラルに向け、2030年に二輪車のEV化比率を80%にするという大胆な目標を掲げる。
豊田通商・グローバル部品ロジスティクス本部 堀崎 太COO
このため、2022年時点の二輪EVの普及率は約4%に過ぎないが、四輪車に先行しいて二輪車のEV化が加速していることから、合弁会社を設立し、EV駆動ユニットの生産を立ち上げることにした。
生産するEV駆動ユニットはギアボックスとモーターなどで構成され、後輪横側からユニットを取り付けるサイドモーターレイアウトの新しいタイプという。
大塚社長は会見で、インドはコミューターといわれる100ccから125ccのバイクが主力であり、この最大のボリュームゾーン用に最適化し、ガソリン車を上回る性能を備えたユニットであることを強調した。
強みは小型で静粛性に優れたサイドモーターレイアウト
最高時速は70キロから80キロを確保し、EVで課題になる静粛性についても直接、後輪を駆動するため、優位性があるとした(具体的には、ベルトやチェーン駆動を採用した駆動ユニットでは騒音の課題があり、一方でインホイールモーターとするタイプは車輪のサイズ内に収める制約があり、パワー面で不利という)。
デルタの高効率モーターとムサシの減速機構という両社の得意領域を組み合わせることで、高効率で軽量小型のEV駆動ユニットに仕上げた。約4年前から共同開発に着手しており、既にユニットの完成度が高いことが競合を退けるアドバンテージになるため、これが今回の合弁設立のきっかけとなった。
第1弾の供給先もすでに決定しており、ムサシの出資・協業先でもあるEVスタートアップ企業のBNC(インド・タミル・ナードゥ州)が調達して、同駆動ユニットを搭載した二輪EVを2024年2月から販売する計画だ。
さらにアフリカやアジアの二輪車市場にも挑戦するとし、主にスタートアップ企業と話し合いを進めている。インドをメインの市場としながらも、既に積み上げた青写真を基にグローバル展開を目指す。
月産1万台から始動、30年に世界市場で年産100万台に
大塚社長は、ムサシの最大の供給先であるホンダ向けについても協議は行っており、採用につながるよう期待したいと話す。
武蔵精密工業・大塚浩史 代表取締役社長
豊田通商は、こうしたEV駆動ユニットの生産に合わせて、経済ブロック化の観点からサプライチェーン構築や製品のグローバル展開をサポートする。
合弁会社のCEO(最高経営責任者)就任が決まっている瀬戸川健二氏はEV駆動ユニットの事業展開について、当初1ラインからスタートするが、3年以内に生産ラインを4~5ラインに増やし、2030年の100万台のユニット生産につなげたいと強調した。
合弁新会社ムサシ デルタ eアクスル インディアPrivate Limitedの瀬戸川 健二CEO
1ラインの生産能力は年産約10台。二輪EV市場が拡大すれば専用工場建設も視野に入れる。
写真向かって左から、デルタ電子・華 健豪 代表取締役社長、デルタ電子・産業オートメーションビジネスグループAndy Liuゼネラルマネージャー、武蔵精密工業・大塚 浩史 代表取締役社長、合弁新会社となるムサシデルタ eアクスル インディアPrivate Limited・瀬戸川 健二CEO、豊田通商・グローバル部品ロジスティクス本部 堀崎 太COO、豊田通商・グローバル部品ロジスティクス本部モビリティパーツ事業部 光武 泰彦 部長